Asfar P, Singer M, Radermacher P.
Intensive Care Med. 2015 Jan 30. PMID:25634474
「ショック」は酸素需給バランスの異常なので、酸素を高流量で投与することは理にかなっていると考えられているが、活性酸素(ROS)による副作用の危険性がある。VIP(Ventilate-infuse-pump)は重要な蘇生手順である。近年のガイドラインでは換気(Ventilate)における酸素供給量をできるだけ低くするように推奨している。
✔ 酸素供給量の維持
高濃度酸素を投与しておくことで、気道確保やヘモグロビン減少時の酸素供給をいくらか維持できるかもしれないが、ショックにおける純酸素の効果を調査した研究はない。
✔ 肺への影響
酸素毒性により、6~25時間純酸素に暴露されると気管支や肺胞に炎症性の変化が起きると言われている。また、換気血流比の低い肺領域では吸収性無気肺が起きることが知られているが、PEEPを付与することで予防できる。
✔ 血管への影響
純酸素により心拍数は減少して末梢血管抵抗は上昇するため、心拍出量は減少する。この血管収縮作用は脳血管と冠動脈に著しい。さらに、実験的には消化器系に血流を分配し、糖利用を効率的にすすめる作用を持つと言われている。
✔ 急性冠症候群
AVOID試験によると、高濃度酸素を吸入した患者では梗塞巣が大きくなり、不整脈や再梗塞を起こしやすくなった。蘇生ガイドラインでは、SpO2 94~98%を目標とするように推奨しており、明らかな低酸素血症や呼吸苦、肺うっ血が無ければ酸素投与は不要としている。
✔ 脳への影響(頭部外傷、脳卒中、心肺停止蘇生後)
理論的には高濃度酸素による血管収縮作用は頭蓋内圧を低下させると考えられる。頭部外傷患者に対し、高圧酸素療法によって頭蓋内圧を減少させて予後を改善させたという報告がある。このように実験やパイロットスタディでは良い結果がでても、臨床研究では脳卒中や脳出血、低酸素性脳症に対しては有害であると報告されている。虚血再灌流障害がその理由なのかもしれない。
✔ 周術期
高濃度酸素によって創感染を減らすことができると報告されているが、がん患者の2年生存率を悪化させてしまう。
✔ ICU生存率を改善するために適切な酸素分圧は?
後向き観察研究では死亡率と動脈血酸素分圧にはU字型の関係があると報告されている。
◎ 私見
少なくとも高濃度酸素が「確実に」良いと証明されたものはないようなので、とりあえずは「ちょうどよい」酸素投与を心がける。ちょうどよい、を定義するのは難しいけど、酸素飽和度90%で!みたいなぎりぎりの設定は大変だから、酸素飽和度97%前後を目標にすることになりそう。
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