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2015年7月31日金曜日

重症患者の筋委縮(MUSCLE study)

Acute skeletal muscle wasting in critical illness.
Puthucheary ZA, Rawal J, McPhail M, Connolly B, Ratnayake G, Chan P, Hopkinson NS, Phadke R, Dew T, Sidhu PS, Velloso C, Seymour J, Agley CC, Selby A, Limb M, Edwards LM, Smith K, Rowlerson A, Rennie MJ, Moxham J, Harridge SD, Hart N, Montgomery HE.
JAMA. 2013 Oct 16;310(15):1591-600. PMID: 24108501


✔ 背景
 重症患者では機能障害を伴う骨格筋委縮が認められる。骨格筋委縮の特徴や蛋白代謝異常における病態学的役割を明らかにする事を目的として研究を行った。
✔ 方法
 平均APACHEⅡスコア 23.5、患者は18歳以上で48時間以上人工呼吸管理を受け、7日以上ICUに在室し生存退室した63人を対象として検討した。筋委縮は第1、3、7、10日目に大腿直筋の横断面積を超音波で計測して判定した。組織学的な検討や蛋白代謝についても検討した。
✔ 結果
 大腿直筋の横断面積は10日目に有意に減少していた(-17.7%)。筋生検を行った28人について、大腿直筋横断面積の減少、筋線維横断面積の減少、蛋白/DNA率の減少が観察された。大腿直筋横断面積減少は一臓器不全患者に比べて多臓器不全患者で大きかった。筋線維壊死は54.1%に認められた。筋蛋白合成は1日目に既に抑制されており、7日目には増加に転じていた。しかし、下肢の筋蛋白破壊は10日間にわたって続いており、破壊に比べて合成が抑制されている事が原因であることが示唆された。
✔ 結論
 重症患者において筋委縮は早期から速やかに生じており、その程度は多臓器不全患者で強かった。
大腿直筋横断面積の推移(文献より引用)
◎ 私見
 重症患者の筋委縮はかなりダイナミックに起きている様子。さて、この意義は何か。機能的予後を示すのか、もっと他の何かを反映するのか。筋委縮の程度を見ながら介入をするとよいのか。治療の指標になるのか。色々と興味はある。

2015年7月20日月曜日

重症患者のビタミンD欠乏

Understanding vitamin D deficiency in intensive care patients
K. Amrein et al
Intensive Care Med. 2015

✔ 背景
 ビタミンD欠乏は筋骨格系疾患の原因となることが知られている。近年、重症ICU患者の予後に関わる修飾因子であるといわれるようになった。
✔ 頻度
 血液中の25-hydroxyvitanin D(25OHD)はビタミンDの状態を知るマーカである。議論はあるが、75nmol/L以下をビタミンD低下、50nmol/L以下をビタミンD欠乏、30nmol/L以下を重度の欠乏と定義されている。50mmol/Lを閾値としたとき、ICU患者におけるビタミンD欠乏の頻度は60~100%である。
 ICU入室後に様々な原因でビタミンDは欠乏する。まず、食事(卵、アボカド、魚など)からほとんど摂取できなくなる。さらにいくつかの遺伝的・行動学的因子がビタミンDの光合成を抑制していることもある。これらの要因の影響は入院することによって増幅される。手術、輸液、ECMO、CPB、血漿交換は著明にビタミンDを低下させる。さらに、ICU患者は肝機能障害、副甲状腺機能障害、腎機能障害を合併して25OHDから活性体への変換がうまくいかなくなるリスクがある。
✔ ビタミンDの補充
 ICUの患者は必要最低限の量のビタミンDを摂取していないか低い量(200~800IU/day)しか補充されない。しかし、その量では補充に数カ月必要となってしまう。つまり、入院患者のビタミンDを正常なレベルまで戻すのはほとんど不可能である。
✔ ビタミンD欠乏は重要なのか?
 ビタミンDは消化管・腎・骨に作用してカルシウムの調節に重要な役割を持つ。さらに、重症疾患の病態生理に関わる重要臓器にその受容体が見つかっている。基礎実験や観察研究のデータによると、ビタミンD欠乏は重症疾患の重症化や予後悪化に関与するとされている。
✔ 介入試験
 現時点では検討に耐えうるRCTはひとつしかない(VITdAL-ICU)。この研究では475名の重症患者を無作為にカルシウム補充群(Cholecalciferol 540,000IU負荷投与+90,000IU/month)とプラセボ群に振り分けて検討したが、プライマリエンドポイントである在院日数には有意な差が無かったが、有意ではないもののビタミンD群では院内死亡率を7%低下させていた。ビタミンD<30nmol/Lの重度の欠乏群で検討すると死亡率低減効果は有意となった。
✔ 展望
 これまでの研究を総合すると、高用量ビタミンD補充は魅力的な介入と考えられるが、ビタミンD欠乏が直接的に予後悪化に関係しているのかはまだ明らかになっておらず、高ビタミンD血症(>200nmol/L)がもたらす副作用(高カルシウム血症・高カルシウム尿症)があり得ることを考えると、さらなる研究を要すると言わざるを得ない。
 これらの研究を行うにあたってはいくつかの問題があることを認識すべきである。まず、25OHDの閾値が定まっていないことが挙げられる。VITdAL-ICUの結果を考えれば30nmol/Lを採用すべきかもしれないが、ベースラインの25OHDが30~50の患者の身体機能も長期間かけて改善してきている事を無視してはいけない。ふたつめに、ビタミンD値の結果が数週間遅れて報告されることも考えに入れなくてはいけない。みっつめに、ビタミンD代謝物や用量設定の問題が挙げられる。最後に、適切なエンドポイントの設定が挙げられる。25OHDが著明に低下している患者では死亡率が良いのかもしれないが、そうでない患者では別のエンドポイントを設定すべきかもしれない。
✔ 結論
 重症患者でビタミンDは欠乏しており、介入することは有用である可能性があるが、さらなる研究が必要である。

◎ 私見
 まったく注目していなかったけど、さすがに無視できないので少し勉強。まだまだ発展途上の領域のようなので、今後の動向に注目。