K. Amrein et al
Intensive Care Med. 2015
✔ 背景
ビタミンD欠乏は筋骨格系疾患の原因となることが知られている。近年、重症ICU患者の予後に関わる修飾因子であるといわれるようになった。
✔ 頻度
血液中の25-hydroxyvitanin D(25OHD)はビタミンDの状態を知るマーカである。議論はあるが、75nmol/L以下をビタミンD低下、50nmol/L以下をビタミンD欠乏、30nmol/L以下を重度の欠乏と定義されている。50mmol/Lを閾値としたとき、ICU患者におけるビタミンD欠乏の頻度は60~100%である。
ICU入室後に様々な原因でビタミンDは欠乏する。まず、食事(卵、アボカド、魚など)からほとんど摂取できなくなる。さらにいくつかの遺伝的・行動学的因子がビタミンDの光合成を抑制していることもある。これらの要因の影響は入院することによって増幅される。手術、輸液、ECMO、CPB、血漿交換は著明にビタミンDを低下させる。さらに、ICU患者は肝機能障害、副甲状腺機能障害、腎機能障害を合併して25OHDから活性体への変換がうまくいかなくなるリスクがある。
✔ ビタミンDの補充
ICUの患者は必要最低限の量のビタミンDを摂取していないか低い量(200~800IU/day)しか補充されない。しかし、その量では補充に数カ月必要となってしまう。つまり、入院患者のビタミンDを正常なレベルまで戻すのはほとんど不可能である。
✔ ビタミンD欠乏は重要なのか?
ビタミンDは消化管・腎・骨に作用してカルシウムの調節に重要な役割を持つ。さらに、重症疾患の病態生理に関わる重要臓器にその受容体が見つかっている。基礎実験や観察研究のデータによると、ビタミンD欠乏は重症疾患の重症化や予後悪化に関与するとされている。
✔ 介入試験
現時点では検討に耐えうるRCTはひとつしかない(VITdAL-ICU)。この研究では475名の重症患者を無作為にカルシウム補充群(Cholecalciferol 540,000IU負荷投与+90,000IU/month)とプラセボ群に振り分けて検討したが、プライマリエンドポイントである在院日数には有意な差が無かったが、有意ではないもののビタミンD群では院内死亡率を7%低下させていた。ビタミンD<30nmol/Lの重度の欠乏群で検討すると死亡率低減効果は有意となった。
✔ 展望
これまでの研究を総合すると、高用量ビタミンD補充は魅力的な介入と考えられるが、ビタミンD欠乏が直接的に予後悪化に関係しているのかはまだ明らかになっておらず、高ビタミンD血症(>200nmol/L)がもたらす副作用(高カルシウム血症・高カルシウム尿症)があり得ることを考えると、さらなる研究を要すると言わざるを得ない。
これらの研究を行うにあたってはいくつかの問題があることを認識すべきである。まず、25OHDの閾値が定まっていないことが挙げられる。VITdAL-ICUの結果を考えれば30nmol/Lを採用すべきかもしれないが、ベースラインの25OHDが30~50の患者の身体機能も長期間かけて改善してきている事を無視してはいけない。ふたつめに、ビタミンD値の結果が数週間遅れて報告されることも考えに入れなくてはいけない。みっつめに、ビタミンD代謝物や用量設定の問題が挙げられる。最後に、適切なエンドポイントの設定が挙げられる。25OHDが著明に低下している患者では死亡率が良いのかもしれないが、そうでない患者では別のエンドポイントを設定すべきかもしれない。
✔ 結論
重症患者でビタミンDは欠乏しており、介入することは有用である可能性があるが、さらなる研究が必要である。
◎ 私見
まったく注目していなかったけど、さすがに無視できないので少し勉強。まだまだ発展途上の領域のようなので、今後の動向に注目。
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