2015年7月22日水曜日

延命治療の差し控えと死亡率

Respective impact of no escalation of treatment, withholding and withdrawal of life-sustainingtreatment on ICU patients' prognosis: a multicenter study of the Outcomerea Research Group.
Lautrette A, Garrouste-Orgeas M, Bertrand PM, Goldgran-Toledano D, Jamali S, Laurent V, Argaud L, Schwebel C, Mourvillier B, Darmon M, Ruckly S, Dumenil AS, Lemiale V, Souweine B, Timsit JF; Outcomerea Study Group.
Intensive Care Med. 2015 Jul 7. PMID: 26149302


✔ 背景
 延命治療差し控えの決断(Decisions to forgo life-sustaining treatment (DFLST))の頻度と予後に及ぼす影響を調査した
✔ 方法
 データベースを用いた前向き観察研究。DFLSTは以下のように定義された。
Stage 1:治療に最善と考えられるが必要というわけではない治療を行わない(No escalation)
Stage 2:治療に必要な治療を行わない(Withholding)
Stage 3:治療に最善と考えられる必要な治療を止める(Withdrawal
 30日死亡率との関係を重症度でマッチさせて検討した
✔ 結果
 10,080人が対象となった。1290人(13%)においてDFLSTがなされた。No escalationは26%、Withholdingは39%、Withdrawalは35%であった。ひとつ以上の慢性疾患を持つ高齢者や重症度の高い患者がDFLSTを行われる群に多くみられた。DFLSTがされなかった患者の30日死亡率は13%であったのに対し、No escalationでは35%、Withholdingでは75%、Withdrawalでは93%であった。重症度をマッチしたところ、30日死亡率のハザード比はWithholdingで5.93、Wtihdrawalで20.05と有意であったが、No escalationでは1.14と有意ではなかった。
✔ 結論
 DFLSTは13%の患者で行われていた。ただし、No escalationは死亡率を上昇させる要因では無かった。

◎ 私見
 とても興味深い論文。治療の差し控えにはNo escalation、Withholding、Withdrawalの三段階があってNo escalationだけは死亡に寄与しない。その理由として必要な可能性の低い治療を”しない”としただけかもしれないとか、医原性の合併症が減ったからではないかとか考察している。この最後の「医原性合併症の減少」というのが面白い。積極的になんでもすることが患者さんにとって良いことではないことを間接的に示しているのではないだろうか。延命治療の考え方を整理するうえでもよい論文でした。

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