2015年4月4日土曜日

末梢循環に対する疼痛の影響


Tissue oxygen saturation and finger perfusion index in central hypovolemia: influence of pain.
Høiseth LØ, Hisdal J, Hoff IE, Hagen OA, Landsverk SA, Kirkebøen KA.
Crit Care Med. 2015 Apr;43(4):747-56. PMID: 25513787


✔ 背景
 組織酸素飽和度やPeripheral perfusion index(PPI)は外傷患者の循環血液量減少を早期に検出しうる間接的指標である。循環血液量減少は交感神経緊張を伴うが、疼痛のような刺激も交感神経を緊張させる。外傷に痛みは多くみられるため、循環血液量の評価において疼痛の影響を除外する必要があるのかもしれない。本研究の目的は、循環血液量減少と疼痛の組織酸素飽和度ならびにPPIへの影響を明らかにすることである。
✔ 方法
 20人のボランティアを対象とした実験的研究である。循環血液量減少は下半身に陰圧(-60mmHg)を付加することで再現した。疼痛は冷水刺激で再現した。それぞれの有無で2×2の4通りの組み合わせができる。実験対象者はそれぞれの刺激を8分間負荷された。組織酸素飽和度は脳、三角筋、前腕、母指球で測定した。PPIは指で測定した
✔ 結果
 循環血液量減少によって、すべての部位の組織酸素飽和度とPPIが減少した。一方、疼痛刺激では脳を除くすべての部位の組織酸素飽和度が減少し、PPIも減少した。両刺激が加わると、疼痛単独と比べて大きく全ての部位の組織酸素飽和度とPPIが減少した。
✔ 結論
 循環血液量減少と疼痛は組織酸素飽和度とPPIを減少させる。疼痛存在下では循環血液量減少によってより大きく組織酸素飽和度が減少することから、循環血液量減少を評価する際には疼痛の影響を考慮しなくてはならないといえる。
組織酸素飽和度の変化(文献より引用)
◎ 私見
  組織酸素飽和度以外にも、血圧や心拍数、心拍出量や末梢血管抵抗に対してどのような影響を及ぼすのかが示されていて興味深い。外傷に限らず苦痛に伴う交感神経過緊張は身体所見やバイタルサインを”乱す”。まずは鎮痛をしっかり行うことの重要性を新たな視点から提示した良い研究と思う。これは健常ボランティアによる研究なので、重症患者でどのような意義があるのかを調べる必要はあるだろう。

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