2015年8月14日金曜日

非侵襲的陽圧換気中の鎮静は安全か? No

Is sedation safe and beneficial in patients receiving NIV? No.
Conti G, Hill NS, Nava S.
Intensive Care Med. 2015 Jul 7. PMID: 26149298


Murielらの研究に対するEditorial。Pro-ConのConの方。

✔  鎮静薬はほとんど用いられていない
鎮痛・鎮静はICUで広く用いられている。しかし、NIVの受容がうまくいかない状況での鎮痛鎮静薬投与はあまり行われていないことが分かった。Murielらの報告によると、鎮痛薬や鎮静薬を投与した患者は20%しかおらず、つまり大部分のNIV患者は鎮痛薬や鎮静薬が無くてもうまくいっている事を示唆している。
✔ 鎮静薬の投与を第一に考えてはいけない
マスクの形状、ソフトウェアの改善、グラフィックモニタの発達による細かい調節、チームアプローチにより患者-呼吸器の同調性は改善できる。NIV受容が良くない時にはまずは非薬理学的なこれらの方法を行い、鎮痛薬や鎮静薬の投与は気管挿管の一歩手前、最後の手段と考えるべきである。
✔ 経験を積んだスタッフの監視が無ければ鎮静してはいけない
鎮痛薬や鎮静薬の効果には個人差がある。ボーラス投与は時に危険な呼吸抑制をきたしうる。また、通常の病棟でNIVを導入している状況を時折見るが、これら緊密な監視が行い得ない状況での鎮静薬使用は注意が必要である。鎮痛薬や鎮静薬はバイタルサインの持続モニタ下に経験を積んだスタッフが細かく調整できる状況で投与すべきである。
✔ 危険な副作用がある
GABA作動薬、オピオイドが良く用いられる薬剤である。Propofolは患者-呼吸器同調性を阻害すると言われている。呼吸数は変わらないが、呼吸駆動力(横隔膜の電気的活動を記録することで評価できる)を抑制する。一方、オピオイドは呼吸駆動力は変えないが呼吸数を減少させる。デクスメデトミジンは呼吸抑制が無いとされるが、さらなる研究による評価が必要である。

◎ 私見
危険な側面もあるのだから「NIVに安全」とは言えないという意見。そもそも有効かつ安全な介入というのはあまりないし、ProもConも納得できる、というのが僕の感想。
Pro-Conで共通していたのは鎮痛薬や鎮静薬の効果そのものだけで議論してはいけないという点。これは重要だと思う。使う側の知識や熱意、環境や状況、医療資源の量などがどうしても関わってくる。VV-ECMOもドクターヘリも○○という薬も、なんでもそう。「有効だって言ってたから」「やりたいから」で始めてよいものではない。包丁が切れ味抜群でも美味しい料理ができるとは限らないのと一緒。

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