2020年1月12日日曜日

輸液過剰という言葉は使わない方が良い

Vincent JL, Pinsky MR.
Crit Care2018 Sep 11;22(1):214. PMID:30205826

・循環管理において心拍出量を規定しているのは有効循環血液量(Effective circulation blood volume)であり、循環血液量の60~70%を占めるUnstressed volumeを除いたStressed volumeがその指標となる
・動脈血圧は抵抗の高い細動脈によって規定されているため、動脈血圧は有効循環血液量の指標とはならない
・静脈コンプライアンスとStressed volumeによって生じる圧が平均循環充満圧(Mean circulatory/systemic filling pressure; Pms)であり、蘇生における輸液の第一の目的は、Stressed volumeを増やしてPmsを増加させることということになる
・Hypovolemiaは血液量が少なくPmsが低い状態の事であり、血管外から血管内への水分や電解質の移動が起きている
・Hypervolemiaは血液量が多くPmsが高い状態の事であり、血管内から血管外へ水分や電解質が移動して浮腫を形成する
・Hypervolemiaは浮腫を伴うが、浮腫が生じているからと言ってHypervolemiaとは限らない。例えば敗血症性ショックなど炎症反応が高度な病態では血管透過性が亢進しており、浮腫を形成しつつ血管内容量が小さいということがありえる。つまり、高度の浮腫と全身の水分量増加があるにもかかわらずHypovolemiaとなっている
・ひとたび患者の状態が安定すれば循環蘇生の段階で負荷された水分を取り除くために利尿剤が投与されることがあるが、これはHypervolemiaが明らかな時にのみ行われるべきである。つまり、StabilizationからEvacuationのPhaseである
・Fluid overloadという言葉は取り除くべき水分の過剰を暗に示唆しており、利尿剤投与というPracticeに繋がりがちであるが、Hypovolemiaである可能性があるため、この言葉は不適切である

文献より引用

◎私見
輸液過剰に対して利尿剤を投与するのではなく、Hypervolemiaに対して利尿剤を投与すべきであるということ。「乏尿だからフロセミド」とか「浮腫があるからフロセミド」ではないということも大事。

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