Taccone FS, Citerio G, Stocchetti N.
Intensive Care Med. 2019 PMID:31820035
CRASH-3 trial(Lancet 2019)では、単独頭部外傷患者に対する受傷早期(3時間以内)のトラネキサム酸(TXA)投与の効果を検証したRCTだが、28日死亡率には有意な差は無かった(19.8% vs 18.5%、RR 0.94)。しかし、軽度~中等度の頭部外傷患者に限ってみると有意に死亡率が減少していた(R 0.75、95%CI 0.64-0.95)。
これをもって頭部外傷においてTXAは極めて有効であるとの言説が認められるが問題がある。そもそもサブグループ解析の結果でそこまで言えるのかどうか疑問であるし、All-cause mortalityをHead injury-related mortalityと解釈するのも問題である。研究の途中でプロトコルが変更されて多くの患者が除外されるに至っているし、機能障害には両群で差が無い(いつ機能障害を評価したのかもわからない)。血栓症に差が無かったとしているが明らかな血栓症のみを調べており実際の血栓形成を過小評価している可能性がある。GCS 13-15の軽度頭部外傷患者の背景が不明だし、もともと軽度と中等度を合わせて解析する計画ではなかった。TXAの機序に関するアウトカムデータ(血腫の量や凝固機能)についての報告もない。
ではどのように考えればよいか。まず、TXAは重度頭部外傷には推奨されないだろう。一方で軽度頭部外傷でもCTで出血があればTXA投与が正当化されるかもしれない。中等度頭部外傷(GCS 9-12)ではタイミングと瞳孔反応が許せばTXAを投与してよいだろう。
◎私見
TXAの神経毒性が心配で頭部外傷では使いづらいのではないかと思っていたが、CRASH-3でその懸念は無さそうだということが分かって安心していた。では、本来期待している作用である出血の抑制と死亡率の低下についてはどうかというと、あまり期待できるものではないのではないかというのが正直なところ。ICU入室する頭部外傷患者は軒並み重症だからだという理由もあるのだが、そのあたりのことを明確に解説したEditorial。こういうのは読んでいて面白い。
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