Individualized PEEP setting in subjects with ARDS: a randomized controlled pilot study.
Pintado MC, de Pablo R, Trascasa M, Milicua JM, Rogero S, Daguerre M, Cambronero JA, Arribas I, Sánchez-García M.
Respir Care. 2013 Sep;58(9):1416-23.PMID: 23362167
PEEPの設定方法と予後を検討したパイロット・スタディ
✔ 背景
一回換気量を低く設定するだけでは末梢気道が繰り返し開閉される可能性があるため、PEEPで気道開放状態を維持することになる。しかし、適切なPEEPレベルを決定する方法について、臨床的に有用な方法は見つかっていない。
✔ 方法
ARDSに対して低一回換気量かつ気道内圧30 cmH2O未満で人工呼吸管理されている患者を対象とし、コンプライアンスによってPEEPを決定する群とFiO2によってPEEPを決定する群とに無作為に割り付けた。18歳未満、妊娠、神経筋疾患、頭蓋内圧亢進、頭部外傷、左室機能障害、72時間以上人工呼吸管理を受けている患者、圧損傷のある患者は除外した。
1)人工呼吸開始~24時間後
ARDSの診断基準を満たした患者に対し、低一回換気量(6~8ml/kg予測体重)、気道内圧30 cmH2O未満、pH 7.30~7.45となるような呼吸数(最大35回/min)、SpO2 88~95%もしくはPaO2 55~88mmHgとなるようなFiO2で設定して人工呼吸管理を行った。PEEPはできるだけ低いFiO2を達成できるようなPEEPを採用した。気道内圧が高くなりすぎる場合は一回換気量を1ml/kgずつ減らして最低4ml/kgとした。このような症例ではプラトー圧35cmH2Oまで許容した。24時間後に2群に無作為に割り付けた。
2)コンプライアンス群
毎日、Suterらの提唱する方法を採用した。静的コンプライアンスは一回換気量を2秒間の吸気ホールドで得られた気道内圧で除して得た。PEEPは5cmH2Oから開始して2cmH2Oずつ上昇させ、もっとも静的コンプライアンスが大きくなる時の値を至適PEEPとした。
3)FIO2群
FiO2に基づきARDS network groupの提唱するPEEPに設定した。
4)呼吸管理(両群共通)
全例で鎮静薬と麻薬を使用した。筋弛緩薬は内因性PEEPやプラトー圧計測のためだけでなく、低一回換気量を達成する目的のためにも用いた。PaO2>60mmHg、FiO2<40%、PEEP<6cmH2Oとなったら離脱を開始した。無作為化より72時間は肺動脈カテーテルを用いてPEEPの血行動態に対する影響をモニターした。
✔ 結果
ARDSの原因で最も多かったのは感染(71.4%)であった。コンプライアンス群で多臓器不全が多かった。無作為化の時点のPEEPに差はなかった。有意ではないもののコンプライアンス群で酸素化(P/F)が改善し、28日死亡率が低い傾向があった。また、多臓器不全、呼吸不全、循環不全の存在しない時間が有意に長くなった。
✔ 結論
ARDSに対してコンプライアンスに基づいてPEEPを決定する方法は臨床的なアウトカムを改善しうる。
◎ 私見
小規模のパイロットスタディであるとか、盲検化されていないとか、静的コンプライアンス測定に伴うわずらわしさとかのLimitationはあるが興味深い内容。筋弛緩薬を使わなくてはならないところが問題か。それにしても。毎日いじっているありふれた人工呼吸器の設定ひとつですらこんなに判っていないことがある、ということを肝に銘じるべきと思う。新しいモードや派手な治療に飛びつく前に。
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