Boyle AJ, Di Gangi S, Hamid UI, Mottram LJ, McNamee L, White G, Cross LJ, McNamee JJ, O'Kane CM, McAuley DF.
Crit Care. 2015 Dec;19(1):846. PMID: 25777929
✔ 背景
ARDSは予後の悪い疾患だが、今のところ有効な薬物療法は報告されていない。ARDSは全身性炎症反応SIRSに伴って起きるが、併発する凝固障害によって微小循環が障害される。血小板は好中球を誘導するためARDS発症メカニズムのひとつであると考えられている。アスピリンはARDS発症リスクを減らす事が報告されているが、発症してしまったARDSに対してどのような効果があるのかはまだ分かっていない。
✔ 方法
2010年~2012年までにARDSと診断された患者を対象として後向きに検討した。Primary outcomeはICU死亡率とした。
✔ 結果
202人の患者が対象となった。28%の患者が病院前ないしICUでアスピリン投与を受けていた。多変量解析の結果、アスピリン投与は病院前であれICU在室中であれ、死亡のリスクを有意に減らす(OR 0.38)事が判明した。その他、ICU死亡と関連する危険因子は、昇圧剤使用(OR 2.09)、APACHEⅡ(OR 1.07)であった。ICU在室期間や病院死亡とは関連が無かった。
✔ 結論
アスピリンはARDSによる死亡を減らすかもしれない。
カプランマイヤー曲線(文献より引用) |
◎ 私見
アスピリンによる血小板機能抑制がARDS進行を抑制するのではないかという研究。後向きなので、患者背景にかなりのばらつきがある(アスピリン群の方が年齢が高く、冠動脈疾患や脳血管疾患、糖尿病、COPD、喫煙者が多く、スタチン投与も多い。一方でアルコール多飲や肝硬変はアスピリン非使用群で多い)。ARDSに対するアスピリンの効果を検証する前向き研究がいくつか進行中のようなので(STAR、LIPS-A、ARENA)、結果が楽しみです。
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