Ten recent advances that could not have come about without applying physiology
Michael R. Pinsky, Laurent Brochard, John A. Kellum
Intensive Care Med 2015. DOI 10.1007/s00134-015-3746-9
1.輸液反応性の評価
輸液反応性は前負荷を評価しているのではなく、前負荷の予備力を評価している。静的な指標は前負荷への反応性を予測できない。前負荷の増大に伴って一回拍出量が増加する時に輸液反応性があると定義される。陽圧換気と受動的下肢挙上(PLR)の両者によって前負荷が一過性に変化するため、実際に輸液をしないでも反応性を評価することができる。Vt≧8ml/kgの陽圧換気によってPVVやSVVが10~13%を超える場合、またはPLRによって心拍出量が10%以上増加する場合に輸液反応性があると判定する。呼気炭酸ガス濃度の増加を代用指標とする方法もある。
2.動脈圧波形による心拍出量推定
動脈圧は血管トーヌス、インピーダンス、イナータンス、収縮能によって影響されるが、左室一回拍出量を反映するため、さまざまな機器を用いて心拍出量推定が行われるようになった。
3.蘇生輸液製剤の選択
輸液によって電解質や酸塩基平衡に影響がでる。生理食塩水を大量に輸液すると高クロール性アシドーシスが起きうる。乳酸リンゲルより生理食塩水の方が血清Kは上昇しやすい(pH低下に伴い細胞内から細胞外へKがシフトするため)。晶質液は速やかに血管内から移動していくため、総体液量の補正には良いが過剰負荷となる可能性がある。輸液は血管内皮や臓器に影響を及ぼし得る。
4.透析と限外濾過は低血圧を起こしうる
限外濾過により血管内水分量が除去されて循環血液量減少が起きる。間質からの水の移動がこの循環血液量減少を軽減する。CRRTやSLEDはこの循環への影響を弱め、虚血による臓器損傷を軽減しうる。しかし、血液透析は除水をしない時でも血圧を低下させることがある。すなわち、溶質の除去により血管内水分量が間質に逃げていくからである。CRRTなどはこの反応も軽減しうる。
5.プラトー圧と一回換気量の制限によってVILIを予防できる
大きい一回換気量とプラトー圧は正常肺・異常肺どちらも傷つける。様々なコンプライアンスの領域が存在する肺において、有効なガス交換を実現しつつ肺胞壁ストレスや変形を最小限にすることが目的となる。
6.肺障害を最小としガス交換機能を最大とする腹臥位
肺血流量や肺胞換気量は血管の状態や胸壁コンプライアンス、重力の影響を受ける。腹臥位にすることで血流に影響を及ぼすことなく肺側の肺領域の換気を増やすことができる。肺側優位の血流は腹臥位にしてもあまり変わらい。腹臥位は胸壁を固くし、コンプライアンスを低下させ、過膨張から来る肺障害を予防し、心圧迫を防ぐ。
7.心血管機能と気道内圧
肺過膨張により肺血管抵抗は上昇する。吸気ホールドによって得られるプラトー圧が上昇して肺毛細血管圧を凌駕すると、肺高血圧症を起こす。PEEPや一回換気量を制限することでプラトー圧を低く保ち、肺性心を予防し、心血管の反応性を増大させることができる。
8.肺障害の重症度に応じたPEEP調節
肺の開放と閉塞の繰り返しは危険なため、ARDSでは高いPEEPを要する。一方で過膨張から心血管系に悪影響を及ぼし得る。よって、高PEEPはかなりの肺胞障害をきたした患者に適用すべきものである。コンプライアンスと酸素化が最大になるようなPEEPを設定する。
9.体外ガス交換
ECMOやECCO2Rのような体外循環により肺障害を最小にして治癒を促す事ができるかもしれない。ECMOのARDSに対する効果はさらなる研究が必要である。ECCO2RはVILIを減らし、高炭酸ガス血症患者の挿管を減らすことができるかもしれない。
10.わずかな腎機能の変化が腎傷害の指標となる
ヒトは大きな腎予備能をもっているが、血清クレアチニンのわずかな変化ですら長期予後悪化の予測指標となり得ることが分かっている。
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