2015年3月16日月曜日

ICUの患者さんに毎日たずねるべき5つの症状

Five patient symptoms that you should evaluate every day.
Chanques G, Nelson J, Puntillo K.
Intensive Care Med. 2015 Mar 11.PMID: 25758669

✔ 背景
 症状に対処することは医療において重要。ICUでも症状を聴くべき

✔ 痛み
 ICU患者が最も頻繁に訴える症状である。痛みの存在から重大な疾患(腹膜炎、心筋梗塞、静脈炎など)や医原性の原因(血管拡張薬関連頭痛、経鼻胃管による咽頭痛など)を見つけることができる。多くの処置(胸腔ドレーンや創部ドレーンの抜去、動脈圧ラインの挿入、気管吸引など)が痛みを伴うが、驚くべきことに最もよくみられるのは体位変換に伴うものである。痛みはYes/NoではなくNRSなどを用いて定量すべきである。痛みの部位と強さを確認し、治療によって改善するかどうかをみる。適切なツールで疼痛を評価し対象することで予後を改善しうる。
✔ 渇き
 のどの渇きはICUで広く認められる強い症状であるが、多くは見逃されて対策をとられていない。可能ならNRSなどで評価をすべきである。渇きの存在は大量オピオイド投与(50 mg/day以上)や大量フロセミド投与(60 mg/day以上)に関連して起きる。強い渇きは消化管疾患患者が経口摂取を止められている時に起きやすく、渇きによる苦痛はマイナスの水バランス、降圧剤、人工呼吸、消化管疾患に関連して起きる。スポンジスティックや冷水スプレーの噴霧を唇の保湿剤を使用する前に使う。
✔ 不安
 不安はICU患者で苦痛をもたらす重要な症状である。不安は恐怖とは異なるが、自発覚醒や心配、興奮よりは恐怖とともに認められる。不安を誘起する原因として、治療的介入、身体拘束、カテーテル、チューブ、人工呼吸器非同調が挙げられる。自ら訴えることのできる患者は、Verbal rating scaleやFaces Anxiety Scaleで評価することができる。娯楽や音楽で軽減を試みることがある。医師は安心させ、励まし、指導する。鎮静薬も使用する。
✔ 呼吸苦
 呼吸苦はICU患者が感じる苦痛のなかでも重要なものである。人工呼吸患者の半数が呼吸苦を感じていると言われている。鎮痛薬や鎮静薬の使用量が減り、低容量換気が流布すると共に呼吸苦を訴える患者は増えているのかもしれない。VASやModified Borg scale、Faces scaleを用いて評価する。まず、「あなたは今、息苦しさを感じていますか?」と尋ねる。もし、答えが「はい」なら「息苦しさの程度は軽度、中等度、重度のどれですか?」と尋ねる。呼吸苦は薬物(オピオイド)や非薬物学的アプローチで対処する。非侵襲的換気も有用かもしれない。
✔ 不眠
 ポリソムノグラフィを用いた研究で、ICU患者は頻繁に睡眠を中断されている事が分かった。Richards-Campbell Sleep Questionnaireなどで評価する。不眠はせん妄や人工呼吸器離脱困難と関連している。夜間の人工呼吸器設定ではアルカローシスと筋疲労を防ぐように細やかに設定するべきである。


◎ 私見
 正直に言って、渇きや不安は正確に評価できていなかった。浅い鎮静への流れの中で、患者さんとのコミュニケーションはもっと重要になるのだろうと思う。
 ところで、不安と恐怖はなにが違うのでしょうか。以前読んだ本の中で「経験不可能なものに対しては不安、経験可能なものには恐怖を感じる」と書いてあった。確か死を恐れることが可能かというお話の中での一節だったと思う。死は経験不可能なので、不安を感じることはあっても恐怖を感じることはない、というような結論だったかな。
 ICUの患者さんは全く未知の世界の中で毎日苦痛を経験していくのですから、しっかり評価して対処する必要がありそうです。

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