Cariou A, Nolan JP, Sunde K.
Intensive Care Med. 2015 Apr 10. PMID: 25860446
1.Bystander CPRの増加
質の高いCPRによって初期リズムが除細動適応である可能性が高まり、長期予後の改善につながるとされている。通信指令係による電話でのCPR指示を含む、コミュニティーにおけるCPR教育が重要。
2.市民救助者による早期AED使用
早期除細動は生存率を改善するため、最初のショックまでの時間をできるだけ短くするためにあらゆる努力を行わなくてはならない。AEDは警察や消防隊員、一般市民救助者が簡単に使用できる。
3.質の高いALS
ALSとはCPR、除細動、気道管理、薬剤投与、治療機材の使用を組み合わせたものである。予後を改善させるという証拠はないが、ガイドラインに従って質の高いALSを提供するよう努力するべきと考える。薬剤の種類、薬剤の組み合わせ、胸骨圧迫装置などのデバイスが予後を改善するかどうかさらなる研究と発展が期待される。
4.ALSのモニタ
質の高いALSを達成するためにはモニタが必要である。心拍出量を反映する呼気炭酸ガス濃度は、リアルタイムでCPRの質をモニタできる方法である。高度な気道確保を要するが胸骨圧迫の質を持続的に評価でき、ショック後のROSCとPEAを判別できる。NIRSや心室細動波形解析は循環や除細動の適正化に有用かもしれないツールである。蘇生困難例では心停止に至った原因の診断が重要であるが、超音波を用いた評価方法を確立することが特異的治療につなげるために必要である。
5.蘇生困難例に対する高度治療の開発
蘇生困難例のでは胸骨圧迫装置を用いることで蘇生適応範囲を広げることができるかもしれない。重要臓器灌流を維持し、適切な病院への搬送を可能とし、ECLSを導入することができる。ECLSが標準的治療不応例の蘇生に有用であるという証拠が多く集まってきている。しかし、患者選択やその効果についてはまだ明らかになっていないこともある。
6.蘇生後ケアの改善
心停止の原因を治療し脳を二次損傷から保護することで短期的にも長期的にも蘇生後患者の予後を改善することができる。近年のガイドラインでは冠動脈疾患が原因の場合は即時のカテーテル治療を推奨している。低酸素性/虚血性脳障害は院外心停止の死因で最も多い。現時点では脳機能の回復を最大にする治療は体温を最初の24時間、33~36℃に維持することである。早期再灌流療法と低体温療法を組み合わせることで、良好な長期予後が期待できる。
7.予後推定
蘇生後の昏睡患者の神経学的予後を推定することは難しい。良好な経過の患者は数日で昏睡から覚醒することがあるため、この期間に延命治療を減らす(Withdrawする)のは早すぎる。臨床所見だけでは延命治療の継続に関する決断をするには不十分である。ERC/ESICMは蘇生後昏睡患者に関する予後推定のガイドラインを発効している。一般に、予後予測はROSCより72時間以降に行い、いくつかの予後予測因子(神経電気生理、画像検査、バイオマーカ)を組み合わせて行うべきである。それらの結果が食い違った場合の予後予測については分かっていないため、さらなる再評価が推奨される。
8.リハビリテーション
神経学的予後はCPCなどによって評価されるが、良好と判断された場合でも認知機能やQOLが良い場合もあれば、重篤な記憶障害を持つ場合もあると報告されている。頭部外傷に対する積極的なリハビリテーションの有用性は広く認識されているが、心停止蘇生後の患者の身体的リハビリテーションの必要性についてはよくわかっていない。
9.レジストリ
質の高いレジストリのデータを用いることで、異なるヘルスケアシステム同士を比較することが可能となる。リスク調整モデルを用いることでさらに信頼性が高まる。観察研究として用いる場合はバイアスが問題となるが、仮説生成やさらなる臨床研究につなげるという観点では重要である。いくつかの質の高いレジストリが知られており、ガイドライン変更や心停止に対する治療の効果を検討する意味でも有用である。
10.研究プログラム
ガイドライン推奨の多くは質の低い証拠に基づいているため、質の高い研究が治療を改善するために必要である。しかし、心停止は極めて緊急度の高い病態であることに加えて、心停止に陥った患者は研究に同意できないため、臨床研究は極めて困難である。心停止患者の生存率は増えてきてはいるとはいえ依然として低率であり、有意差をもって治療の有用性を示すためには数千人の患者を集める必要がある。前向き研究を行うなら多施設・多国籍で行うことが必要だろう。
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