Thompson G, O'Horo JC, Pickering BW, Herasevich V.
Crit Care Med. 2015 Mar 9. PMID: 25756413
✔ 背景
アメリカ政府はHealth Information Technology for Economic and Clinical Health(HITECH)を通じてHealth information technology(HIT)の発展のためにに多額の投資を行った。これは、HITがより良い医療を提供し、コストを削減することを期待して行われたものだが、HITの発展の臨床効果についてはあまり知られていない。
✔ 方法
2013年7月までにHITについて発表された論文をReviewした。電子オーダリングシステム(Computized physician order entry; CPOE)、臨床診断意思決定支援システム(Clinical decision support systems; CDSS)、サーベイランスシステム(Surveillance systems; SS)、LANアナライザ("Sniffer")、電子診療録(Electronic Medical Record; EMR)の臨床的意義(死亡率、在院日数、コスト)を調べた者を選択した。
✔ 結果
データベースから2736編、手検索で67編の論文が見つかった。そのうち45編が検討対象となり、26編を用いてメタアナリシスを行った。
・死亡率
検討対象となった45編のうち33編が在院死亡率をエンドポイントとして検討していた。メタアナリシスによるとCPOEとEMRは死亡率に影響が無かった。CDSSはわずかに良い影響を与える傾向が認められた(OR 0.83; 95% CI 0.69-1.00)。Snifferは有意に死亡率を低減した(OR 0.85; 95% CI 0.76-0.94)が、研究の不均質性が認められた。
ICU死亡率をエンドポイントしていたものは、CPOEが5編、CDSSが4編、Snifferが3編存在していたが不均質性が大きく、メタアナリシスでもその効果に一定の傾向は認められなかった。
90日死亡率をエンドポイントとしていたのは、CDSSが2編、Snifferが1編あったが、有用性は認められなかった。
・在院日数
CPOE4編、Sniffer1編、CDSS3編が在院日数を検討していた。CPOEが在院日数を減少させる傾向が認められた(Mean decrease 0.67; 95% CI -2.07-0.73)が、やはり不均質性が大きかった。3編がICU在室日数に言及していたが、有意な影響は認められなかった。
観察研究などメタアナリシスに供することのできない研究が26編認められた。16編が在院日数に影響なしと結論し、1編が研究対象の1施設のみで在院日数を減少させたと報告した。8編は在院日数を減少する効果があると報告し、1編はEMRで在院日数が延長したと報告した。
・コスト
14の研究があったが不均質性が著しく、メタアナリシスが行えなかった。CDSSで薬剤費が減少したとするものやEMRでコストが増大したとするものなどがある。
✔ 結論
HITの導入が死亡率、在院日数、コストに対して大きな効果があることを証明できなかった。研究の不均質性が大きかった。効果を謳う前に、これらのテクノロジーの臨床効果を詳細に検討すべきである。
◎ 私見
高度なテクノロジーが患者予後を変えるわけではないということ。使う側の影響が大きすぎるということだと思う。ちなみに自分の勤めるICUでは電子媒体と紙媒体が混在している。両方の媒体で指示を記載する、などのルールがあって、かえって非効率なんじゃないかと思ったりもしている。
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