2015年4月17日金曜日

ICUにおける消化管出血の疫学研究

Prevalence and outcome of gastrointestinal bleeding and use of acid suppressants in acutely ill adult intensive care patients
Mette Krag, et al.

Intensive Care Medicine Online First - April , 2015 Pages 1 - 13

背景
 重症患者の消化管出血の頻度、危険因子、予後に対する影響、制酸剤の効果について検討した。
✔ 方法
 前向きコホート研究。プライマリアウトカムを臨床的に有意な消化管出血とし、ベースラインの情報や90日死亡率との関連を検討した。
 11カ国97施設に7日間のうちに入室した18歳以上の患者を対象とした。消化管出血のために入院した患者や再入室の患者は除外した。消化管出血は下記のように定義した。
・Overt GI bleeding(顕性消化管出血)
 吐血、コーヒー残さ様嘔吐、下血、血便、経鼻胃管からの血性排液のうちいずれか。
・Clinically important GI bleeding(臨床的消化管出血)
 顕性出血後24時間以内に血圧低下(20mmHg以上)、昇圧剤開始/増量(20%以上)、Hb低下(2g/dL以上)、輸血(2単位以上)のいずれかを認めた場合。ただし、消化管出血以外の原因を除外すること。
✔ 結果
 1034人が対象となった。顕性消化管出血は4.7%、臨床的消化管出血は2.6%に認めた。臨床的消化管出血の独立した危険因子は、3つ以上の共存疾患(OR 8.9)、肝疾患併存(OR 7.6)、RRT(OR 6.9)、凝固障害併存(OR 5.2)、急性凝固機能障害(OR 4.2)、制酸薬使用(OR 3.6)、臓器不全スコア高値(OR 1.4)であった。制酸剤は73%の患者で使用されており、その多くはPPIであった。臨床的消化管出血の90日死亡への影響は粗オッズ比 3.7、調整オッズ比 1.7(0.7~4.3)であった。
✔ 結論
 臨床的消化管出血はまれだが制酸剤は多く使用されていた。共存疾患、肝不全、凝固障害、臓器不全が主な危険因子であった。調整オッズ比でみると臨床的消化管出血は90日死亡率と有意な関係はなかった。粗オッズ比では有意に関連があるが、これは主に共存疾患や臓器不全、年齢による影響であると考えられた。
文献より引用
◎ 私見
 過去に報告された他の消化管出血の危険因子には48時間以上の人工呼吸などがある。この手の研究は対象とする患者群の違いによって危険因子がかなり変わるので、解釈には注意が必要。ストレス潰瘍予防、もう一度適応を整理し直しておかないと。

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