2015年5月13日水曜日

早期深鎮静は生命予後を悪化させる

Early deep sedation is associated with decreased in-hospital and 2-years follow-up survival
Critical Care (2015) 19:197

✔ 背景
 重症患者に対する深鎮静は有害であるとのエビデンスが蓄積されつつある。前向き研究では早期深鎮静は有害であるとの結論が出されているが、本研究では欧州のヘルスケアシステムにおける”現実世界での”臨床的意義を調査するため、後向きにICU入室後早期(48時間)の深鎮静が短期/長期予後に与える影響について調べた。
✔ 方法
 調査期間(6年間)にベルリンの大学病院ICU(心臓血管外科術後ICU、ARDS治療ICU)に入室して人工呼吸管理を受けた患者を対象とし、Matched-pair analysisを行った。18歳未満、在室48時間未満、ICU再入室、体外加温/冷却法実施時、ECMO、入室時非人工呼吸管理患者は除外した。
 鎮静管理はプロトコルに基づき、看護師によって各勤務帯で評価されるRASSを評価しながら行われた。深鎮静は以前の研究ではしっかりと定義されていなかったため、以下のように定義した。
1.一定期間のRASS計測回数のうち、RASS≦-3の割合を計算した
2.院内死亡をアウトカムとしてRASS≦-3の割合のカットオフ値を設定した。
✔ 結果
 ROC曲線の分析から、RASS≦-3の割合が85%を超える場合を深鎮静と定義した。深鎮静群(DS)は513名、非深鎮静群(NDS)は1,371名が該当した。Matched cohortとして510名ずつを選定し、検討を加えた。DS群はより若く、昇圧剤が多く、ベンゾジアゼピンが頻繁に使われていた。DS群は死亡率(ICU死亡率、院内死亡率)、在室/在院日数が長く、人工呼吸管理期間が長く、腎代替療法を受ける割合も多かった。
✔ 結論
 早期深鎮静は生存率を下げる。一方で、早期浅鎮静の効果については検討できていないので、今後研究すべきである。

◎ 私見
 深鎮静が有害であることが後向きのMatched pair analysisでも検証されたということで、べつに新規性があるわけではないが、深鎮静の定義としてRASS≦-3の割合を検討しているところが面白かったので読んでみた。結論でも述べられているが、深鎮静の害を示したものであって浅鎮静の有益性を証明したものではないことに注意が必要。また、”非常に”深い鎮静の害を示しただけかもしれないことにも注意が必要。

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