2015年6月18日木曜日

敗血症に対する輸液の効果は動脈系で緩衝される

Effects of fluid administration on arterial load in septic shock patients
Mannuel Ignaci Monge Carcia et al.

Intensive Care Med. 2015

✔ 背景
 敗血症性ショック患者に対する輸液が動脈系にどのような負荷をかけているのかを調査した
✔ 方法
 敗血症性ショックの状態で食道ドプラと間欠的動脈圧ラインを使用している患者を対象とした。平均血圧65mmHg未満、収縮期血圧90mmHg未満、昇圧剤の投与、乏尿、頻脈、乳酸アシドーシス、毛細血管再充満時間遅延などの所見を根拠に輸液負荷を行った。輸液製剤は生食かHES(130/0.4)を使用し、500mlを約30分でボーラス投与した。動脈負荷はウインドケッセルのモデルを用いて評価した。
✔ 結果
 81名の患者が対象となった。54名(67%)が輸液負荷によって10%以上心拍出量が増加した。一方、平均血圧が10%以上増加したのは29名(36%)にすぎなかった。心拍出量が増加した群(Preload responders)のうち、平均血圧が増加したのは24名(44%)であった。輸液負荷によって有意に有効動脈エラスタンス(Ea)と全身血管抵抗(SVR)が減少した。
✔ 結論
 輸液投与は有意に動脈負荷を減らす。心拍出量が増加したものでも同様の変化が起きる。つまり、敗血症性ショック患者で輸液を負荷して心拍出量が増えても血圧が改善しないことがあることを示している。

◎ 私見
 平均血圧65mmHg以上を目標に輸液負荷すると過剰輸液になる可能性があるということだろう。個人的には平均血圧65mmHgに固執して輸液することはない。心拍出量が増えるかどうかが重要だと思う…が。はたして心拍出量が増えさえすればよいのだろうか? 灌流圧なのか、灌流量なのか。そもそも圧や量は真の目標(組織の酸素需給バランスの改善)を達成しているかどうかを評価する指標なのか。輸液はまだまだよくわからない。

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