O'Callaghan DJ, Gordon AC.
Intensive Care Med. 2015 May 7.PMID: 25947955
✔ 敗血症性ショックとVasopressin
敗血症性ショックはストレスホルモンの一種であるVasopressinの相対的欠乏を伴う。Vasopressinによって血管平滑筋が収縮することで血圧が上昇する。近年のふたつのメタアナリシスによると、VasopressinはNoradrenalineに比較して短期予後を改善する傾向が認められ、SSCG2012でもNoradrenalineの補助として追加投与することが推奨されている。
VASST(Vasopressin in Septic Shock Trial)ではNoradrenalineと比較して28日死亡率を変えなかったが、軽症群(Noradrenaline<15µg/min)では予後を改善した。同様にLactateが低い群では予後が改善するとの報告もある。Vasopressinを投与すると心拍数が減少する傾向があるが、近年の敗血症性ショックに対するβ遮断薬使用報告と通じるものがあり、興味深い。
✔ 腎機能やステロイドとの相互作用
VasopressinはNoradrenalineに比べて腎灌流を改善する可能性がある。RIFLE分類でRiskにあたる患者にVasopressinを使用するとFailureやLossに進行する率が低下する傾向があったと報告されている。また、Vasopressinをステロイドと併用すると予後が改善するとも報告されている。これらの報告をすべて鑑みると、Vasopressinは敗血症性ショックの早期でそれほど重症化していない段階で、場合によってはステロイドと併用して投与すると利益が最大になるようである。VANISH(Basopressin versus Noradrenaline as Initial Therapy in Septic Shock)などの臨床研究の結果が待たれるところである。
✔ 免疫修飾作用
ステロイドとの併用で有効であるなど、免疫修飾作用が推測されている。VASSTにおいてVasopressin投与群ではサイトカインが低い傾向であった。
✔ 副作用
すべての昇圧薬は血管収縮作用に伴う副作用を起こしうる。血管拡張性ショックにおいて、Vasopressinが副作用を増加させるという証拠はない。
✔ Selepressin(選択的V1aアゴニスト)
Vasopressinは全ての受容体サブタイプに結合する。血管収縮を含む有用な効果はV1a受容体を介して行われる。一方、V2受容体を介した作用は血管拡張や凝固亢進作用などあまり好ましくない。そこで、V1a受容体選択的なアゴニストであるSelepressinが注目されている。
✔ 敗血症以外のVasopressin
心肺蘇生において、AdrenalineとVasopressinの同時投与が予後を改善したとの多施設研究がある。また、心臓手術後のVasoplegic shockに対しても有効である可能性がある(Vasopressin versus Noradrenaline for the Management of Shock After Cardiac Surgery; VaNCS)。さらに、動物実験ではあるが、出血性ショックに対しても有効である可能性がある。外傷患者に対する効果を検証したVITRIS(Vasopressin in Traunmatic Haemorrhagic Shock)がこの領域における回答を示すかもしれない。
Vasopressin受容体サブタイプ(文献より引用) |
◎ 私見
個人的にはかなり使いやすい薬剤であると思う。まあ、そんなに頻繁に使うわけではないが。Vasopressinひとつとっても、どう使うべきかがまだ定まっていない。VITRISの結果も含めて、要注意。
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