2015年6月29日月曜日

気管挿管直後の循環虚脱

Incidence of and risk factors for severe cardiovascular collapse after endotracheal intubation in the ICU: a multicenter observational study
S. Pervet et al
Crit Care 2015;19:257 

✔ 背景
 ICUにおける緊急気管挿管後に見られる重篤な心血管虚脱(Cardio vascular collapse; CVC)は致命的な合併症のひとつである。様々な因子が緊急気管挿管によるCVCに関わっていると考えられるが、それを検討した研究はない。
✔ 方法
 多施設前向き観察研究。42のICUで連続する1400の気管挿管を検討した。血行動態が安定した患者(心血管作動薬を使用せずMAP>65mmHg)に重篤なCVCが認められるかを評価した。重篤なCVCは輸液負荷(500~1000ml)にもかかわらず最低収縮期血圧≦65mmHg、持続する収縮期低血圧≦90mmHgと定義した。
✔ 結果
 重篤なCVCは29.8%に認められた。年齢によらないSAPSⅡ(OR 1.02)、年齢60~75歳(OR 1.96)、年齢75歳以上(OR 2.81)、挿管の原因が急性呼吸不全(OR 1.51)、ICUにおける初回挿管(OR 1.61)、前酸素化にNIVを使用(OR 1.54)、気管挿管直後にFiO2 70%以上(OR 1.91)が独立した危険因子であった。昏睡患者はCVCを起こしにくい因子であった(OR 0.48)。
✔ 結論
 CVCは急性呼吸不全のために気管挿管を要する重篤な患者で、特に高齢者によくみられる現象である。CVCを予防するようなバンドルアプローチが気管挿管に伴う合併症や死亡を減らすかもしれない。

◎ 私見
 フランスのFRIDAREA研究の二次解析。年齢やSAPSⅡは予想通りと言ったところ。前酸素化のためのNIVが独立した危険因子というのがちょっと面白い。他には、気管挿管に使用する薬剤が興味深い。麻薬をほとんど使用していない。個人的には麻薬を併用して鎮静薬の量を減らし、場合によってはノルアドレナリンの持続投与ができるようにスタンバイして気管挿管するのだけど。こういった薬剤に使い方によっても差がでないのかとか、CVCがその後の経過を悪化させる因子なのかが知りたいところ。

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