2015年8月20日木曜日

気管挿管中のHFNCは危険かもしれない

High-Flow Nasal Cannula to Prevent Desaturation in Endotracheal Intubation: A Word of Caution.
Papoff P, Luciani S, Barbàra C, Caresta E, Cicchetti R.
Crit Care Med. 2015 Aug;43(8):e327-8. PMID: 26181134


Miguel-MontanesらのHFNCで気管挿管中の低酸素を予防できるという研究(CCM2015;43:574-583)に対するLetter

✔ Miguel-Montanesらは軽度~中等度の低酸素患者の気管挿管でHFNCは非再呼吸式リザーバ付酸素マスクに比較して気管挿管中の低酸素を予防して有用であると報告した。Discussionの中で「より重症の患者を対象としていないが、この方法はそのような患者でも有用であろう」とコメントしている。我々は軽症~中等度の低酸素の患者では有用であることに異論はないが、より重症の患者ではHFNCは危険ではないかと考えている。
 まず、Miguel-Montanesらは気管挿管前の肺疾患の重症度をP/Fのみで評価しており、HFNCやNIVを使用している患者を含んでいないなど問題がある。HFNCをもともと使用していた患者では気管挿管中の低酸素を予防できなかったのではないかと推測している。PEEPを用いずに前酸素化をすることの難しさはMortらが報告しているとおりである。Engstromらも動物実験で同様の報告をしているし、NielsenらもPEEPを20cmH2Oかけないと無気肺に陥った肺を前酸素化することはできないと報告している。HFNCはPEEPと同様の効果を持つと言われているが、5cmH2Oを超えることはほとんどない。
 次に、我々の乳児を対象とした研究の結果がある。健康な乳児ともともと酸素化が障害された状態の乳児とではHFNCの効果に大きな違いがあることが判明した。小児と成人とでは異なるともいえるが、この観点は今後の研究を進める上で重要な意味を持つと思われる。

◎ 私見
 Miguel-Montanesらの回答も載っており、興味深い議論でした。どちらの意見が正しいかというより、このLetterに示されている「同じ疾患でも重症度(進行度)によって病態生理が異なるのだから、治療の有効性も違うだろう」という考え方が重要と思った。当たり前のことなのに、意外と無視されていたりする。

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