2015年9月6日日曜日

VV-ECMO中の低酸素血症

Recent developments in the management of persistent hypoxemia under veno-venous ECMO.
Levy B, Taccone FS, Guarracino F.
Intensive Care Med. 2015 Mar;41(3):508-10. PMID: 25447805


✔ はじめに
 VV-ECMOは重篤な呼吸不全に対して使用されることがあるが、ときどき許容されるよりも酸素飽和度が低下してしまうことがある。そこで酸素飽和度を改善させるためのアルゴリズムを開発した。
✔ 動脈血酸素飽和度の目標
 BrodieらはSaO2>88%を推奨しているが、ELSOでは80%までを許容している。どこまで許容できるかは患者の状態による。重要なのは、持続する低酸素血症はFIO2を100%に設定して診断しなくてはならないということである。
✔ VV-ECMOにおける動脈血酸素飽和度の規定因子
 VV-ECMO中のSaO2規定因子で最も重要なのはECMO流量の心拍出量に対する比である(Qecmo/Qco)。この比が高ければ高いほどSaO2は高くなる。Schmidtらは比が60%を超えるとSaO2が90%を超えると報告している。もうひとつの重要な因子はECMO回路へのリサーキュレーション量で、これは脱血カニューレと送血カニューレの先端の距離とECMO流量に影響される。最後に、ヘモグロビンも間接的にSaO2に影響する。
✔ ECMO確立直前から直後
 VV-ECMO前に心拍出量を評価することで適切なカニューレサイズを決定できる。高心拍出量患者ではデュアルルーメンカニューレは不適切かもしれない。リサーキュレーションは脱血・送血カニューレ先端の距離に依存するのだから、その位置には注意を払わなければならない。大腿静脈脱血-大腿静脈送血の場合、脱血カニューレはIVCに、送血カニューレは右房に留置する。一方で、大腿静脈と頚静脈を選択する場合は、脱血カニューレ先端を腸骨静脈とIVC接合部に、送血カニューレを右房とSVC接合部に留置する。こうすることで先端距離が10~13cmになる。
 ECMO確立後に両カニューレから血液ガス分析を行い、脱血カニューレの酸素分圧が送血カニューレの酸素分圧の10%以下なら有意なリサーキュレーションを除外できる。その他、気胸や気管チューブの閉塞、大量血胸や無気肺についても評価をする。
✔ 酸素供給量の適正化
 Hb 7が赤血球輸血の閾値として推奨されることが多いが、ECMO流量を大きくしても低酸素血症が持続する時は輸血をせざるを得ないことがある。Schmittらは輸血後にPaO2やSaO2が上昇したことを報告している。
✔ 残存肺機能の適正化と腹臥位
 低酸素血症が持続する場合、人工呼吸器のFIO2を上昇させたりPEEPを上昇させたり、リクルートメント手技を行ったり、NOを使用したりすることがある。腹臥位換気も有用である。背側肺をリクルートし、気道分泌物のドレナージを促進することで酸素化が改善する。GuervillyらはARDSでECMOを使用した患者を対象とした研究で腹臥位がP/Fを有意に改善し、その効果が6時間持続したことを報告している。
✔ Qecmo/Qcoの適正化
 ECMO流量を増やし、ヘモグロビンを適切なレベルに維持し、リサーキュレーションを最小としても低酸素血症が持続するなら、Qecmo/Qcoが60%未満の症例においては心拍出量を減らすことを考える。VV-ECMOを使用している患者は往々にして高心拍出量となっているので、この介入に耐えられることが多い。ただし、心拍出量を増やしうる他の原因(疼痛、シバリングなど)を除外しておく必要がある。心拍出量のモニタには食道ドプラや心エコーを利用する。
・軽度低体温
 実験的ではあるが、もっとも簡単なのはECMO回路の熱交換器を使用して体温を低下させることである。Kimmounらは高心拍出量患者においてこの介入が有用であったことを報告した。体温を37℃から34℃に低下させることで心拍出量が140bpmから85bpmに低下し、心拍出量も20L/minから9L/minに低下し、Qecmo/Qcoは35%から77%に上昇してSaO2は82%から94%になった。昇圧剤の使用量や乳酸値も有意に減少した。
・エスモロール
 低体温療法の禁忌例では短時間作用型選択的β1遮断薬の持続投与が可能である。エスモロールを持続投与すると、心拍出量が減少する一方で脱血量は変化しない。近年の報告でも敗血症症例においてエスモロールが安全に使用でき、SaO2も上昇したことが報告されている。臓器灌流不全が起きていないかどうかはしっかり評価する必要がある。
管理アルゴリズム(文献より引用)
◎ 私見
 VV-ECMO中の低酸素血症に対して、どんな介入ができるのかを示したミニレビュー。もちろん、まずは酸素需給バランスが適切かどうかをしっかり評価したうえで、低酸素血症(つまり酸素供給量)がどうかということをシステマチックに考えていく必要がある。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿