2015年9月8日火曜日

VV-ECMO中の酸素需給バランスの評価

Monitoring of oxygen supply and demand during veno-venous extracorporeal membrane oxygenation
RM Muellenbach et al
Intensive Care Med 2015;41:1733

前回のVV-ECMOのレビューへのCorrespondence

 VV-ECMO中のSaO2を80~88%以上を目標にすることになるが、患者の低酸素耐性に応じて調節が必要である。重要なのは、SaO2は低酸素血症の指標ではあるが組織低酸素を反映するものではないことである。ヘモグロビンの酸素親和性が増加することで組織低酸素が生じるという状況があり得る(酸素解離曲線の左方移動)からである。さらに、SaO2は重症ARDSや敗血症における酸素消費量上昇を反映しないことにも注意が必要である。
 この点については脳組織酸素飽和度の変化に特徴が表れている。ECMO開始直後の二酸化炭素除去によってpHが上昇し、脳血管収縮と酸素解離曲線の左方移動が生じる。これにより、SaO2上昇にもかかわらず、脳灌流と酸素化が障害されるのである。もちろん、このような変化は一過性であり、ECMO維持期には問題とならないことが多いが、このような複雑な生理的反応も考えなくてはならないという一例にはなる。つまり、SaO2のような低酸素血症を単一のパラメータとして使用しても、酸素供給のすべてを評価したことにはならないのである。
 SaO2は他のパラメータ(ヘモグロビン、混合静脈血酸素飽和度、心拍出量)とあわせて評価すべきである。さらにNIRSを用いた脳組織酸素飽和度のモニタが有用であると考える。Levyらの報告にある乳酸値や混合静脈血酸素飽和度を用いた酸素需給バランスの評価に、脳組織酸素飽和度を加えることが有用だろう。

◎ 私見
 ECMO中の酸素需給バランスの評価に脳組織酸素飽和度モニタもどうでしょう、という提案。
 ここのところ酸素需給バランスという言葉を再考している。学生時代の講義がいまになってやっと理解できつつある。当時は全く意味が分からなかったのに。患者さんのベッドサイドにいるとなんとかしようと色々な事を考えるが、こういった前に向かう思考のベクトルがないと「わからない」ままとなってしまうことが多い。そういう思考のベクトルを疑似的にでも体感させるのが良い講義・研修、ということになるのだろう。

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