Harms FA, Bodmer SI, Raat NJ, Mik EG.
Crit Care. 2015 Sep 22;19(1):343. PMID: 26391983
✔ 背景
敗血症の病態生理としてミトコンドリア機能不全は知られている。しかし、ミトコンドリア機能の評価方法は様々であり、このため研究結果も一定していない。この点を解決するために非侵襲的ミトコンドリア機能評価法が有用であると考えた。本研究では生体のミトコンドリア酸素分圧(MitoPO2)を非侵襲的に in vivoで計測する方法の可能性と敗血症動物モデルでの変化について検討した。
✔ 方法
ラットを対照群とLPS投与群とLPS投与+輸液蘇生群の3群に振り分けた。敗血症はLPSの静注(1.6mg/kg/10min)によって再現し、輸液蘇生は膠質液を7ml/kg/hr持続静注+2mlボーラスすることで行った。MitoPO2と酸素消失率(ODR)はProtoporphyrin Ⅸ-triplet state lifetime technique(PpⅨ-TSLT)によって計測した。60秒の皮膚圧迫中のMitoPO2減少のKineticsを記録した。ODRはMitoPO2減少カーブの傾きである。計測はLPS投与前と3時間後に行った。
✔ 結果
LPS投与により血行動態は有意に変化した。LPS投与前のMitoPO2とODRは3群間で有意差は無かった。投与3時間後で計測すると、LPS単独投与群(輸液蘇生なし)のみMitoPO2が有意に低下した。一方、ODRはLPS単独投与群とLPS投与+輸液蘇生群の両方で有意に低下した。
✔ 結論
敗血症ラットモデルを用いた研究で非侵襲的ミトコンドリア酸素消費量モニタの有用性が示された。重症患者への応用も期待できる。
測定原理(文献より引用) |
MitoPO2とODR(文献より引用) |
◎ 私見
ミトコンドリアで産生されるプロトポルフィリンⅨが緑色光で励起されて3重項の状態になり、これが酸素と反応して減少していくところを励起光(赤)を計測して調べる、ということらしい。皮膚を圧迫するのは微小循環の影響を排除してODRを計測するため。ALAクリームを塗っておいてミトコンドリア内のプロトポルフィリンⅨの量を増やしておかないといけないので完全に非侵襲かというとそうでもない気が。
それでも、最終的な到達点であるミトコンドリアの状態を見ることができるというのは魅力的ではある。酸素飽和度モニタみたいに簡便に調べられるような時代が来るのでしょうか。
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