2015年11月8日日曜日

AKIにおける輸液バランスと死亡率

Fluid balance and mortality in critically ill patients with acute kidney injury: a multicenter prospective epidemiological study.
Wang N, Jiang L, Zhu B, Wen Y, Xi XM; Beijing Acute Kidney Injury Trial (BAKIT) Workgroup.

Crit Care. 2015 Oct 23;19(1):371. PMID: 26494153

✔ 背景
 循環動態不安定な重症患者に対し、早期に積極的に輸液することが必要である。しかし、輸液の重要な合併症である輸液過負荷(Fluid overload; FO)により急性腎傷害AKIが発症して死亡率が上昇する可能性がある。そこで、AKI患者の死亡率と輸液バランスの関係を調査した。
✔ 方法
 Beijing Acute Kideny Injury Trial(BAKIT)は前向き多施設観察研究である。本研究ではこのBAKITのデータから2526人のデータを抽出して解析した。AKIの重症度はKDIGOの基準を用いて判断し、ICU入室後3日間の輸液バランスを解析した。体重が10%増加した時にFOと判定した。
✔ 結果
 2526人中1172人が3日間のうちにAKIを発症した。AKI発症群の死亡率は25.7%、発症しなかった群の死亡率は10.1%と有意な差があった。AKI群では1日あたりの輸液バランスと累積輸液バランス、いずれにおいても有意に多かった。輸液過負荷(FO)はAKI発症の独立したリスク因子であった(OR 4.5)。AKI発症群のうち、死亡者は生存者に比べて累積輸液バランスが有意に多かった(2.77L vs 0.93L)。多変量解析の結果、3日間の輸液バランスは28日死亡率の独立した危険因子であった。
✔ 結論
 AKI発症群では輸液バランスが多かった。FOはAKIの独立した危険因子であった。AKI発症群において3日間の累積輸液バランスが多いことは28日死亡率の独立した危険因子であった。
AKI発症者の3日目の体重増加と死亡率(文献より引用)
◎ 私見
 輸液が多いからAKIになって死亡するのか、尿がでて輸液バランスが改善するような患者ではAKIが起きず死亡しにくいのか、はたまた人為的にバランスを負に持っていくと予後が改善するのか、このあたりのことはまだ分からない...

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