2015年11月10日火曜日

気管挿管のタイミングと敗血症の死亡率

Impact of endotracheal intubation on septic shock outcome: A post hoc analysis of the SEPSISPAM trial.
Delbove A, Darreau C, Hamel JF, Asfar P, Lerolle N.
J Crit Care. 2015 Sep 1. PMID: 26410680


✔ 背景
 敗血症性ショックの患者の40~85%の患者が気管挿管と人工呼吸管理を要したという報告があるが、これは相当数の患者が気管挿管を要さずに改善しうることも意味している。敗血症患者の気道確保について調査した。
✔ 方法
 敗血症性ショック患者蘇生における目標平均血圧の差が予後に与える影響を調査した多施設無作為化試験であるSEPSISPAM研究のPost hoc解析。
✔ 結果
 776人中633人(82%)が研究参加の12時間以内に気管挿管されていた(早期気管挿管)。113人(15%)は最後まで気管挿管されず、30人(4%)は12時間以降に気管挿管された(気管挿管遅延)。早期気管挿管が行われた患者の割合に応じてICUを低頻度(80%未満)、中頻度(80~90%)、高頻度(90%以上)に分類した。ICUのタイプ、呼吸器感染、乳酸値>2mmol/L、P/F比低下、Glasgowスコア低値、免疫抑制の欠如が早期気管挿管の独立した予測因子であった。気管挿管しなかった患者は最初の重症度が低く、死亡率も低かった。気管挿管遅延群は早期気管挿管群に比べて28日目までの臓器サポートを要さない生存日数が短かかった。早期気管挿管が高頻度で行われるICUは中頻度のICUに比べて死亡率が高かった。低頻度のICUにおいて死亡率が有意に増えるということは無かった。
✔ 結論
 敗血症性ショックに対して気管挿管をいつどこで行うのかという点が予後に影響しうる。

気管挿管のタイミングと予後(文献より引用)
早期気管挿管実施率の違いと予後(文献より引用)
◎ 私見
 気管挿管は早い方が良いが(生存日数が長くなる)、気管挿管をしすぎる(オーバインディケーション)施設では死亡率が高くなる。やりすぎはよくないということか。適切な治療を適切なタイミングで、特に重症患者管理では早い方が良いわけだが、何も考えずに(適応を熟慮せずに)ルーチンに治療介入をしていると治療合併症によって死亡率が増加することを示唆するのではないか。あるクスリがよいと報告されたからと言って、それに飛びついてどんな患者にでも投与していたら副作用が問題になった、みたいな。
 こういう施設の雰囲気というか姿勢というか振る舞いというか、その差によって治療の有効性が変わり得るということに最近注目していて。面白い論文でした。

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