2016年1月23日土曜日

ARDSの換気はPCVかVCVか

Prospective randomized trial comparing pressure-controlled ventilation and volume-controlled ventilation in ARDS. For the Spanish Lung Failure Collaborative Group.
Esteban A, Alía I, Gordo F, de Pablo R, Suarez J, González G, Blanco J.
Chest. 2000 Jun;117(6):1690-6.PMID: 10858404


✔ 背景
 Pressure controlled ventilation(PCV)は吸気時間の間一定の圧を気道内に生じさせる。吸気流速は漸減波形を示すが、これにより気道抵抗が一様ではない肺組織においてもほぼ一定の空気を分布させることができる。いくつかのARDSを対象とした研究で、Volume controlled ventilation(VCV)からPCVに変更することで酸素化や換気メカニクスが改善したとする報告がある。本研究ではARDSに対してPCVがVCVに比較して院内死亡率を低減するかどうかを検証した。
✔ 方法
 多施設無作為化研究。AECCの定義によるARDS患者79人を対象とし、無作為にPCVとVCVで換気した。VCVの吸気流速は矩形。両群とも吸気プラトー圧は35cmH2O以下になるように調節した。PEEPとFIO2はSpO2が89~92%となる最小のFIO2とPEEPを採用したがPEEPは5cmH2O未満になることの無いようにした。呼吸数、IE比、VCVにおける一回換気量ならびにPCVにおける吸気圧はPaCO2が35~45mmHgになるように調節した。プラトー圧が高くなるようであれば高炭酸ガス血症を許容した。pHが7.2を下回るようであれば炭酸水素ナトリウムを投与した。IE比は3:1までを許容した。人工呼吸に関するパラメータは毎日記録した。抜管成功(気管チューブ抜去後48時間以上経過)もしくは死亡した場合は記録を中止した。
✔ 結果
 両群間の患者背景に有意な差はなかったが、VCV群で腎不全が多い傾向があり、また研究期間中に腎不全に至る割合もVCV群で多かった。多変量解析によると、肺以外の臓器不全が独立した死亡の予測因子であったが人工呼吸のモードには有意差がなかった。
✔ 結論
 VCV群では臓器不全が多く認められ、それらが死亡に寄与していたが、人工呼吸のモードの影響とは考えられなかった。

◎ 私見
 かなり古いがARDSに対してPCVとVCVを比較したRCT。換気メカニクスや酸素化についても両群間で差がでなかった。人工呼吸のモードそのものには恐らく意味がなくて、患者さんに適用する際に調節したりモニタしたりする様々な要素(換気量やPEEPやプラトー圧)が重要なのだと思う。したがって、”慣れている”モードがベストな換気モードになるのではないかと思う。
 となると疑問なのは、そもそも慣れていない換気モードで行われた臨床試験の結果を自施設に導入しようとする際に問題が生じるのではないかということ。例えばPROSEVAはVCVで行われているが、PCVばかり使っている施設でこれを真似た腹臥位換気プロトコルを導入すると混乱が生じる可能性があると思う。

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