Claude Guerin and Michael A. Matthay
Intensive Care Med 2016
✔ ARDSは急性炎症と含気減少を伴う高蛋白性肺水腫による低酸素血症を特徴とする。ARDSは肺循環も傷害し、肺高血圧と死腔を増やす。肺循環はARDS進行に伴って変化する。まず、肺微小循環障害によって血管透過性が亢進し肺水腫が生じる。次に急性炎症と内膜障害に起因する凝固と線溶のアンバランスから血管内微小血栓が生じる。さらに機能的残気量(FRC)の減少から肺血管抵抗(PVR)が増大する。加えて陽圧換気によるある領域の肺過膨張が肺胞血管を圧迫してPVRを増大させる。最後に低酸素性肺血管収縮によってもPVRは上昇する。これらのメカニズムによりARDS発症48時間以内にPVR上昇が生じるのである。このPVR上昇は高炭酸ガス血症やアシドーシスによって助長される。
ACP発症機序(文献より引用) |
✔ Mekontso-Dessapらの報告によると中等度~重度ARDS患者の約22%にACPが認められた。ACP予測スコアとして①肺炎によるARDS、②換気駆動圧18cmH2O以上、③P/F<100、④PaCO2>48mmHgを挙げており、それぞれを1点としてカウントすると、2点、3点、4点の時のACP発症リスクは19%、34%、74%であった。また、ACPが存在すると死亡率が高くなる傾向があった。
この研究からはいくつかの事が言える。まず、以前にくらべてACPの頻度は低くなっているが、依然として22%は存在しているということ。予測スコアが4点を超えるような場合はTEEを行うというアプローチが良さそうであるということ、それでは侵襲的過ぎるということであればTTEも考慮すべきであるということである。
✔ ACP発症を予防するためには何ができるだろうか。まず、低一回換気量による肺保護換気を徹底すべきである。最適なPEEPを適用して換気駆動圧を低くし、FRC減少を防ぐ。NO吸入や選択的肺血管拡張薬が有用かもしれないが、いくつかの臨床研究があるものの有用性は証明されていない。
ACPをきたしてしまった場合は輸液と血管収縮薬が必要である。ノルアドレナリンやドブタミンは右室の収縮力を増大させる。前負荷を増大させることも考慮する。前負荷と心拍出量を持続的にモニタするためにPACやPiccoも有用かもしれない。もし前負荷を増やすことによって状態が改善するなら除水はやめて輸液負荷をする。その他、腹臥位やPEEP低減、体外式CO2除去を行いつつさらに一回換気量を減らすなどが考えられる。これらの方法が臨床的に有用かどうかはさらなる研究が必要である。
◎ 私見
ICMのEditorialから。ACPと思われる患者さんを最近みたのと、絵が分かりやすかったので読んでみた。やっぱりEditorialも面白い。もちろん原著論文を読むのも好きだけど。
0 件のコメント:
コメントを投稿