M. Pirrone et al
Crit Care Med 2016; 44:300-307
✔ 背景
重度の肥満患者は長期間の人工呼吸管理が必要になる可能性が高く、離脱も失敗しがちである。PEEPの調整方法もよく分かっていないが、リクルートメント手技(RM)とPEEP調整を組み合わせることで肺容量と換気メカニクスを改善し、ガス交換を改善できるのではないかと考えられる。筆者らは肥満患者におけるPEEP初期設定は肺容量を維持するには不適切なほど低いのではないかと考えて本研究を計画した。さらに、適切なPEEP設定方法について二つの方法(漸減法と呼気終末経肺圧(Ptpe)法)を比較した。
✔ 方法
前向きクロスオーバ非無作為化介入試験。MGH単施設で行われた。BMI35以上の人工呼吸管理患者14名を対象とした。食道内圧をモニタし、筋弛緩薬(シスアトラクリウム)を使用して人工呼吸器を従量式に設定した。初期設定PEEP、Zero-PEEP、Lowest PEEP(Ptpe計測)、Lowest PEEP(RM後にPtpe計測)、漸減法Best PEEP、漸減法Best PEEP(頭側挙上)の順番で呼吸管理を行い、呼気終末肺容量(EELV)と換気メカニクスをそれぞれのポイントで計測した。
・Lowest PEEP(Ptpe)
PEEPは階段状に増大させ、呼気終末の食道内圧と同等かわずかに大きいところに設定する。Ptpeは0~+2cmH2Oになる
・漸減法Best PEEP
Kacmarekらの方法による。PEEPは経肺圧を参考に選択されたPEEPより4cmH2O高く設定する。2分後にプラトー圧とPEEPを計測し、その差(⊿P)を計算する。その後、PEEPを2cmH2Oずつ減らして最も⊿Pが小さくなるPEEPをBest PEEPとする。Best PEEPが判明したら、その値に2cmH2Oを足した値に人工呼吸器を設定する。
・RM
従圧式換気モードに変更し、PEEP 15cmH2O、呼吸数10、IE比1:1、換気圧15cmH2Oとする。30秒ごとにPEEPを5cmH2Oずつ増やす。PEEPは30cmH2Oまで増加させる。したがってRMは2分かかる。
・EELV
吸入酸素濃度を変更した際の窒素比の変化率を参考に計算した
✔ 結果
平均BMIは50.7であった。PtpeによるLowest PEEPも漸減法Best PEEPもほぼ同じ値となった(20.7±4.0 vs 21.3±3.8)。PtpeによってEELVが大きくなり、酸素化が改善し、肺エラスタンスが減少した。RMはEELVを増大させて呼気終末経肺圧を減らしたことから、肺内換気分布が改善し過膨張を減らしたことが示唆された。PEEP初期設定は不適切に低いと考えられた。
EELVの推移(文献より引用) |
血行動態の推移(文献より引用) |
各パラメータの推移(文献より引用) |
✔ 結論
重度の肥満患者に対するPEEPはもっと高く設定すべきである。RMとPtpe計測を組み合わせることで換気メカニクスとガス交換が改善する。
◎ 私見
重度の肥満患者14名に、こういう管理はどうかという提案。大変なスタディではあるけど(臨床研究に簡単なものはひとつもないと思うので)、RCTでもないし予後をみているわけでもない。うーん。
肥満患者じゃなくてもPEEPは低いんじゃないかと思っている。その根拠をと自分の感覚が適切なのかどうかを検証するためにも食道内圧測定はしてみたいところ。
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