Aneman A, Sondergaard S.
Intensive Care Med. 2016 PMID: 26846515
✔ 血管内容量の維持は血行動態管理の要であるが、安全で再現性のある輸液反応性評価方法はまだ確立していない。ひろく使われているが、CVPをはじめとした静水圧は循環血液量を示す指標ではない。このような状況の中、Passive Leg Rainsing法(PLR)が話題となっている。
✔ 心拍出量(CO)は静脈環流量(VR)と読み替えることができ、これは平均充満圧(Pms)と右房圧(RAP)の圧較差と静脈環流に対する抵抗(RVR)の関係で決定される。Pmsは循環血液量、もっと正確に言うとStressed volumeの正確な生理学的指標であると考えられており、輸液反応性はPmsを上昇させるような介入がRAPやRVRとの関係のなかでVRすなわちCOをどのように変化させるのかを評価することで行われる。Pmsを上昇させるために輸液をすることもできるが、血液の分布を変えることでこれを達成するkともできる。どちらもPmsを上昇させるという目的は共通しているが臨床的には全く異なる手技であると考えなくてはならない。両者ともCOの変化をモニタしなくてはならないという点では同じである。動脈圧や脈圧変動(PPV)のみを指標として用いるべきではないが、呼気炭酸ガス濃度を指標として用いる方法は有用かもしれない。
✔ MonnetとTeboulは下肢を持ちあげるのではなくベッドを傾けるPLR法を紹介している。PLRの感度は下肢挙上に先立って上体を45°持ち上げることで改善するが、この姿勢が無理な患者もいることに注意しなくてはならない。また、鎮痛薬や鎮静薬などRVRや血管のコンプライアンスを変化させるような介入は避けなくてはならない。さらに、PLR中に上体をさげるときには呼吸状態の悪化や頭蓋内圧の上昇にも気をつけなくてはならない。
✔ PLRによって移動する血液量は150~300mlと言われているが、体格や静脈弁の状態、弾性ストッキングなどの有無によって影響を受ける。心原性ショックや循環血液量減少性ショック、高用量の血管収縮薬を使用している時のように末梢血管が収縮している状況でも灌流量は減少する。PLRのCOに与える影響は一時的で短時間で消失するため、COのモニタは動脈圧波形解析や心エコーによる解析のように迅速かつリアルタイムに評価できるものでなくてはならない。ゴールドスタンダードは熱希釈法だが、これは時間がかかりすぎる。GuerinらはPLRによってVRが上昇する患者は500mlの輸液を10分で投与することでCOが15%上昇するとしている。
✔ 他の検査と同様、検査前確率を考えることは重要である。PLRは臨床的に循環血液量減少が強く疑われる様な患者、例えば敗血症性ショックの初期蘇生時や術後早期の患者で用いるのがよい。PLRのカットオフポイントをどこにするのかも感度・特異度に影響する。多くのシステマチックレビューやメタアナリシスによると、COの変化が8~15%をカットオフにするのが良いと考えられる。このとき、ROC曲線下面積は0.96となる。注目すべき点として、洞調律でも非洞調律でも有用である点や自発吸気努力の有無に左右されない点が挙げれる。
✔ 患者予後を決定的に変えるかどうかは不明で、ESICMによって血行動態モニタとしての意義が議論されたが結論がでていない。恐らくその意義は、輸液負荷試験と違い、輸液をしなくて済む点であろう。
◎ 私見
弾性ストッキングの有無だとか忘れがちな点をしっかりみなくてはならないし、ただ足を持ちげればよいというものでもない。でも、もっと使われてもいい評価方法だと思う。
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