Danziger J, Chen KP, Lee J, Feng M, Mark RG, Celi LA, Mukamal KJ.
Crit Care Med. 2016 Feb;44(2):328-34. PMID: 26496453
✔ 背景
肥満はインスリン抵抗性や高血圧、心血管疾患に関係しているが、近年腎疾患との関連も指摘されている。すなわち、腎静脈のうっ血から腎機能が低下する可能性が指摘されている。肥満は慢性腎疾患(CKD)の危険因子であることはひろく知らているが、急性腎傷害(AKI)の危険因子となるかどうかは分かっていない。また、肥満はパラドキシカルにCKDの予後を改善することが知られているが、AKIの予後を改善するかどうかは分かっていない
✔ 方法
単施設コホート研究。MIMIC-Ⅲというデータベースを使用し、身長や体重などのデータが揃っており、末期腎不全ではない患者約15,000人を対象とした。プライマリアウトカムはICU入室中のAKI発症とした。BMIに応じて肥満は低体重(BMI<18.5)、正常(18.5~25)、過体重(25~30)、Ⅰ度肥満(30~35)、Ⅱ度肥満(35~40)、Ⅲ度肥満(40~)とした。
✔ 結果
AKIは21.1%の患者に認められた。AKIの発症頻度はBMIが高くなるほど高く、BMIが5上昇するごとに10%リスクが大きくなった。BMIで層別化して解析したところ、AKIを発症すると一貫して死亡リスクが高くなっていた。AKIの有無で層別化したところ、AKIの無い患者では肥満は予後改善効果を示していたが、AKIのある患者では肥満の予後改善効果は無くなっていた。
✔ 結論
肥満はAKIのリスクではあるが予後には影響しない。
BMIごとのAKI発症頻度(文献より引用) |
◎ 私見
肥満が予後をよくするという一見奇妙な効果は重症患者でも認められるが、肥満はAKIのリスクになり、AKIを発症すると予後改善効果が無くなってしまう。やっぱり肥満はよくない。
腎静脈のうっ血が肥満による腎障害発症のメカニズムなのではということでCVPを調べているが、確かにBMIが高くなるほどCVPも高くなってはいるもののAKI発症を予測できるかというとそうでもないらしい。というより、CVPを測定してもうっ血の有無は分からない、ということなのでしょう。
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