Murias G, de Haro C, Blanch L.
Intensive Care Med. 2016 Jun;42(6):1058-1061. PMID: 26676866
✔ Reverse triggering(RT)は受動的肺膨張によって呼吸中枢が刺激されるという非同調の一種で、しばしば見逃されているが、気道内圧と流量波形をみることで診断できる。
(文献より引用) |
調節換気においてmachine triggerであったとしても、吸気努力の存在を除外できない。呼吸中枢は延髄に存在するが、その律動的な出力(呼吸筋への運動神経出力)は様々な要素によって修飾されている。肺胞換気の増加はPaCO2を減少させ、呼吸中枢を抑制する。機械換気もまた呼吸中枢を刺激する(Entrainment)。PetrilloやGravesらは受動的肺膨張が吸気努力を起こさせることを報告していたが、近年、Akoumianakiらが調節換気中の重症患者に同じような現象が生じることを報告し、RTと名付けた。Entrainmentの最中、調節換気と吸気努力が同じ比率で同調する現象が観察される。通常、そのパターンは短期間しか続かず、7~15回の呼吸サイクルごとに中断される。1:1が最も多いわけではないが、最も安定したパターンであるとはいえる。Gravesらは麻酔状態の人を対象としてEntrainment現象について系統的に調べたところ、呼吸数や一回換気量の変化は様々なリズムの受動的肺膨張と吸気出力の組み合わせをもたらすことを報告している。PaCO2を上昇させたり麻酔レベルを浅くしたりするほど定常状態になりづらくなる。このため、Entrainmentは深鎮静でのみ生じると考えられている。調節換気の開始と自発吸気努力の開始の遅れは全換気時間の中で一定の割合を占めている(Phase angle)。受動的肺膨張だけでなくほかの刺激もEntrainmentを起こすことが分かっている。例えば、呼吸と歩行のリズムのEntrainmentはよく知られている。よって、この気道内圧の低下はリクルートメントかRTかどちらかであるといえる。RTでは吸気努力は調節換気開始から遅れて始まり、調節換気終了後も続く。つまり、調節換気の呼気開始時には吸気筋力がまだ刺激されていることになり、弾性に基づく呼気に抵抗となり、肺胞内圧が上昇し、呼気フローのピークが小さくなる。この図では呼気フローが小さくなっているのでリクルートメントというよりはRTであるといえる。もし十分に深く、かつ長く吸気努力が続けば気道内圧がさらに低下してダブルトリガー(B)をきたす。
C) 従圧式における同様の現象を示してある。肺胞がガスで充満すると肺胞内圧と気道の圧較差が小さくなるので、機械による換気の吸気流量は次第に減少していくパターンとなる。しかしこの図では二峰性の吸気フローを認めている。吸気フローの上昇は肺胞内圧と気道内圧に圧較差が生じたことを示唆するであり、通常はコンプライアンスの改善を示す。呼気開始時のフローが平たん化していることより、コンプライアンスの改善というよりかはRTを示唆する所見である。また、先に示した通り、十分に深く、かつ長く吸気努力が続けばダブルトリガーとなる(D)。
Entrainmentは遅順応性受容体の進展刺激とHering-Breuer反射による持続的迷走神経刺激が原因となって生じる。実際、動物実験において、迷走神経を不活化することでEntrainmentが生じなくなることが示されている。しかし人においては移植肺においても生じることが報告されている。
RTの頻度は不明である。流量や圧波形の微細な変化をみなくてはならないので、特別に注意しないと見逃されてしまう。一般的に呼吸器との非同調は良くない所見だが、RTの意義についてはまだわかっていない。しかし、RTによるダブルトリガーは肺を傷害すると考えられる。RTを理解し、調査する必要がある。
◎ 私見
個人的に興味のあるRTに関する論文。RTはグラフィックモニタを使って診断できるとのこと。自分も波形を見ながら「これはRTだろう」と言ってみたりすることがある。診断するからには何らかの意義が存在しなくてはならないわけだが、それがまだないのがRTの問題。疫学調査をして予後への影響を調査し、治療的介入の効果を測定する必要がある、、、と思われるのだが。
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