Depuydt PO, Kress JP, Salluh JI.
Intensive Care Med. 2016 Mar;42(3):411-4. PMID: 26130322
✔ イントロダクション
集中治療は比較的歴史の浅い専門分野である。医学の進歩により重篤な臓器不全があったとしても患者は長期間生命を維持できるようになったが、これはつまり、もともとの病態や病気の一般的な経過を超えて新しい領域に踏み込んでいることに他ならない。この領域を探索することで、どのように医学を発展させることができるかを要約できる。まず、疾患と症候群という概念を用いて生理学的現象の複雑性を説明する。原因を特定することで予防や決定的治療を行うことができ、経過を明らかにすることで病態の進行を逆転させたり軽減することができる。しかし、現実は我々の提唱する概念よりも複雑で予想不可能なものである。疾患が思考の産物であったり過度の単純化の結果であったりするし、症候群がただの袋であることもある。このような場合、治療を誤りがちである。
1.ARDS
近年発表された新しい基準においても、ARDSの臨床診断はその病理組織とほとんど相関しない。ARDSを診断することは、医原性の肺障害を防ぐ筋弛緩薬や腹臥位のような治療を選択する根拠となるため重要であるが、薬物学的治療に対する反応を正確に予測することはできない。例えば”改善しないARDS”といった場合、BOOPや亜急性過敏性肺臓炎のようなステロイドが効果のある病態であることもあるし、肺線維症のようにステロイドが無効の病態もある。
2.VAPとVAT
VAPには診断のゴールドスタンダードがなく、定義もとらえどころがない。臨床的・放射線学的診断は不正確で、多くの非感染症を含み、不要な抗菌薬投与の原因となってしまっている。細菌学的な厳しい基準を用いれば特異度はあがるが、感度が低下してしまって必要な抗菌薬投与を行えなくなってしまう可能性がある。VAPを明確な診断と考えるのではなく、抗菌薬投与の指標となる相対的なものととらえるべきである。VATは肺浸潤影のないVAPである。肺浸潤影に対するポータブルX線写真の感度や観察者間の差を考えるとVATとVAPはオーバラップしていると考えられる。現時点ではVATにどのようにアプローチすべきかわかっていない。早期の抗菌薬投与がVATのアウトカムを変えるかどうか明らかにされておらず、予防的なアプローチによってVAPやVATを減らすことができても最終的な転帰は変わらないことが知られている。
◎ 私見
例えばARDSを診断しても、それが患者さんの運命を変えることができなければ意味がない。回診の際に飛び交うこれらの「診断名」にどんな意味があるのかを考えるべき、ということだろう。
◎ 私見
例えばARDSを診断しても、それが患者さんの運命を変えることができなければ意味がない。回診の際に飛び交うこれらの「診断名」にどんな意味があるのかを考えるべき、ということだろう。
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