2020年3月8日日曜日

気道閉塞圧(P0.1)

Telias I, Damiani F, Brochard L.
Intensive Care Med. 2018 Sep;44(9):1532-1535.  PMID:29350241

 P0.1(気道閉塞状態において吸気開始から100msec後に生じた圧)は非侵襲的に呼吸運動を評価できる指標である。Whitelawらは健常成人を対象とした調査で、P0.1は比較的一定の値を得ることができ、CO2負荷の程度と相関することを報告した。

 P0.1は呼吸中枢のアウトプットを評価するにあたって良い指標となる。吸気開始直後のわずかな気道閉塞は随意/不随意にかかわらず負荷として影響しない。呼気終末容積から吸気は始まるため、この気道内圧の低下は肺/胸郭のリコイルとは独立に生じる。気流は生じないため気道抵抗に影響されず、肺容積も変化しないため抑制的に働く反射や力速度関係も無視できる。P0.1は呼吸仕事量(WOB)や圧時間積(PTP)とよく相関する。自発呼吸さえ維持されていれば呼吸筋力が弱い状況でも信頼できる値を示す。

 正常では0.5~1.5cmH2Oであるといわれる。安定した状態にある非挿管下のCOPDでは2.5~5.0、人工呼吸管理中のARDSでは3.0~6.0、離脱試験中は1.0~13と報告されているようである。

 一呼吸毎に変動があるため、3~4回ずつ測定する必要がある。内因性PEEPがある場合は吸気運動が始まってから気道内圧が低下するまで遅れが生じる。非挿管患者でも口元で測定したP0.1は呼吸ドライブを過小評価すると言われるが、Contiらは気道内圧が低下し始めてから計測したP0.1は、吸気努力開始から100msecの間に低下する食道内圧の良い代替指標になると証明した(トリガー期間の気流が0のため)。両者の差は-0.3±0.5であり、臨床的に問題がない。
 呼吸器で測定したP0.1を解釈する際にはいくつか注意しなくてはならない点がある。回路内エアの減圧により過小評価となる可能性、呼吸器毎に異なる測定方法を用いているなどがある。いくつかの呼吸器は呼気終末に短時間の気道閉塞を行って計測しているが、いくつかはトリガーフェーズに基づき推定値を呼吸毎に表示している。最新の呼吸器のトリガーフェーズは50msec未満なので、特に呼吸努力が強い場合はP0.1を過小評価する。

 P0.1は吸気努力とよく相関するので、呼吸器のサポートを調節するに用いることができる。補助換気においても自発呼吸モードにおいても、P0.1が大きい時はサポートが足りず、低い時は過剰サポートが示唆される。PCV、IMV、SIMVいずれにおいてもP0.1は吸気努力が亢進していることを検出でき、その閾値は3.5であった(感度92%、特異度89%)。Pletsch-AssuncaoらはWOB<0.3J/LもしくはIneffective effort>10%を過剰補助と定義したとき、これを診断するP0.1は1.6以下であると報告した(感度62%、特異度87%)。これは呼吸数17以下を診断に用いた場合に比べて精度が劣るものであったが、手動閉塞を行ったという計測方法の問題と、過剰補助の定義によるものだと考えられる。興味深いことに、P0.1を用いたClosed loop systemも可能であると報告されている。 
 P0.1は過膨張のある患者のPEEPを調節する際にも利用できる。ManceboらはPEEP付与によってP0.1が減少する場合、内因性PEEPとWOBも減少していると報告している。
 MauriらはVV-ECMO使用中のARDS患者においてP0.1は呼吸ドライブの良い指標であることを報告している。スウィープガスを変化することによって生じたPCO2の変化をP0.1は良く反映した。
 P0.1は離脱の指標となるかどうか多く調べられている。SBTの最中にP0.1が高いと離脱失敗する可能性が高いと予想される。Bellaniらはサポートを減らしていくSBTに失敗した患者は呼吸ドライブ増大(~P0.1高値)に呼応する形で酸素消費を増やすことができないことを示した。
 しかし、P0.1の閾値はオーバラップが大きく、P0.1単独でも他の指標との組み合わせでも定まった閾値が見つかっているわけではない。これは離脱失敗の要因が多岐にわたることや研究デザインが異なることが原因だと考えられる。P0.1はPSV中に計測されることが多いが、抜管後に計測すると過小評価となることが知られている。これらの限界にもかかわらず、臨床医は呼吸ドライブにかかわる情報を得ることができる。例えば、極めて高い値(6以上など)に意味を見出すなどの戦略が考えられる。

◎私見
 興味ある指標。測定可能な人工呼吸器を使用しているのだから、もう少し利用してみても良いのではないだろうか。

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