Kang BJ, Koh Y, Lim CM, Huh JW, Baek S, Han M, Seo HS, Suh HJ, Seo GJ, Kim EY, Hong SB.
Intensive Care Med. 2015 Feb 18. PMID: 25691263
✔ 背景
High flow nasal cannula(HFNC)で呼吸不全患者の挿管を避けることができるかもしれないと言われている。一方で、HFNCによる管理が失敗し、気管挿管遅れることでどのような不利益が生じるのかは分かっていなかった。
✔ 方法
単施設後向き観察研究。HFNCを使用したが気管挿管に至った症例を対象とし、HFNC開始から48時間未満で気管挿管を行った早期群と48時間以降に気管挿管した晩期群の予後を比較した。
・HFNCはどのような患者で使用されたか
SpO2>92%を達成するために9L/min以上の酸素を投与、持続する呼吸窮迫(呼吸数>24/min、副呼吸筋使用、胸郭と腹部の非同調性呼吸運動)、抜管後呼吸不全のハイリスク
・各種定義
気管挿管を必要とした場合を「HFNC失敗」と定義した。気管挿管の適応は、純酸素投与でもSpO2<90%となることが予想される低酸素性呼吸不全、pH<7.3の高炭酸ガス血症、重度呼吸窮迫(呼吸数>35)、コントロールできない低血圧(SBP<90mmHg or mAP<65mmHg)を伴う代謝性アシドーシス、意識障害や誤嚥のために気道確保が必要な状態、心肺停止
抜管後48時間人工呼吸を要さなかった状態を「抜管成功」と定義した。
「免疫抑制療法」は免疫抑制剤の使用、過去6カ月以内に総計1680mg以上のプレドニゾロンと等力価のステロイドしようと定義した。
・呼吸不全の病因
Demouleらの報告をもとに、①新規急性呼吸不全(肺炎、ARDSなど)、②慢性肺疾患急性増悪、③心原性肺水腫、④腎不全による肺水腫、⑤呼吸器感染症以外による敗血症性ショック、⑥抜管後、の六つに分類した。
✔ 結果
期間中、616人がHFNCで管理され、そのうち177人が気管挿管に至った。ICUに入室しなかった2人を除き解析した。早期群が130人、晩期群が45人であった。大部分の患者が免疫抑制療法を行っており(40%)、血液がん(31.4%)、固形癌(24.6%)も多かった。SOFAスコアは早期群で高い傾向にあった。早期群で最も多い呼吸不全の原因は新規急性呼吸不全で、晩期群では慢性肺疾患急性増悪であった。14日死亡率、28日死亡率ICU在室日数は両群間で有意差が無かったが、ICU死亡率、抜管成功率、人工呼吸離脱率、人工呼吸不要日数はいずれも早期群で良好であった。Propensity scoreでマッチさせた37人ずつで検討しても同様の結果であった。
✔ 結論
HFNC開始後48時間以降で気管挿管に至ると予後が悪い傾向がある。
Propensity scoreでマッチさせて比較(文献より引用) |
◎ 私見
HFNCの利点は、①加温加湿された酸素を供給できること、②高流量を使用することで、酸素化を改善し、小さいながらもPEEPを付与し、呼吸仕事量を軽減できること、③会話や咳、経口摂取を可能にすること、④肺炎、圧損傷などの合併症を増やさないとされること、である。本研究で、HFNCが長くなった後に気管挿管されると予後が悪いことが示された。Propensity scoreでマッチさせているとはいえ、あくまで後向きの観察研究なので必ずしもHFNCのせいで気管挿管が遅れたとは言えないとは思うが、同様の結果は非侵襲的陽圧換気で言われているし、やはり無理は禁物ということなのだろう。
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