Das UN.
Crit Care. 2015 Mar 30;19(1):156. PMID: 25886819
Critical Careに掲載されたEditorial
低アルブミン血症は敗血症でしばしば認められる予後悪化因子のひとつである。アルブミンは低アルブミン血症の補正や循環血液量の補正のために使用されるが、その臨床的意義には議論がある。ところで、アルブミンは肝などの組織から多価不飽和脂肪酸(PUFA; アラキドン酸、EPA、DHA)を誘導し、細胞保護作用を持つ可能性がある。
PUFAは炎症性物質であるプロスタグランジンやトロンボキサン、ロイコトリエンの基質になる一方、リポキシン、レゾルビン、プロテクチンといった抗炎症性物質の基質にもなる。つまり、これらの物質のバランスが病状の進行に大きく関わると考えられる。アルブミンはPUFAを誘導し、リポキシンなどの抗炎症性物質の合成を促進することで細胞保護作用を持つと考えられている。
例えば、出血性ショックモデルにアルブミンを投与すると、TNFαやIL6が減少する一方でIL10が増加することが知られている。リポキシンなどの合成量はPUFA量や合成酵素(COXやリポキシゲナーゼ)活性によって変わる。敗血症ではアルブミンの半減期が減少し、利用率も低下するため、抗炎症作用が発揮されないのかもしれない。
敗血症ではTNFαやIL6が増加するが、これらは直接低アルブミン血症を引き起こし、PUFAを欠乏させることが分かっている。したがって、敗血症に対してはアルブミンとPUFAを併せて投与するべきと考える。
アルブミンの効果を規定する因子としては、PUFAの量、合成されたリポキシンなどの量、COXなどの酵素活性、TNFαなどのサイトカイン量、PUFAを減らす活性酸素量、プロスタグランジンなどの炎症性物質量が挙げられる。投与にあたってはこれらの影響を考慮しなくてはならない。
A-FABPは重症患者で増加し、インスリン抵抗性に関わっていると言われているが、PUFAやリポキシン、レゾルビン、プロテクチンはA-FABPの発現を抑制し、インスリン抵抗性を改善し、炎症を抑制し、敗血症において有用となる可能性がある。
(文献より引用) |
アルブミンの抗炎症作用は、恥ずかしながら知りませんでした。まだ確立した事実ではないでしょうが、「炎症を制御する」薬剤ってほとんどありませんからちょっと興味がわきました。ちなみに、この観点から行われている臨床研究はないようです。
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