Abdel-Aziz H, Dunham CM, Malik RJ, Hileman BM.
Crit Care. 2015 Mar 24;19(1):96. PMID: 25887600
✔ 背景
外傷性脳損傷(Traumatic Brain Injury; TBI)における深部静脈血栓症(DVT)予防の抗凝固療法開始時期については議論がある。TBI後の頭蓋内出血(Intra-cranial hemorrhage; ICH)進行の一般的経過、抗凝固療法中のICH進行、DVTの予防効果について過去の研究結果から検討した。
✔ TBI後のICHの一般的経過
抗凝固療法の効果を検討する研究において、TBI24時間後ICHが進行していたのは14.8%、抗凝固療法の効果を検討しているわけではない研究においては29.9%と報告されている。初期CTでICHありの群を対象としても、24時間後にICHが進行していたのは13.5%と報告されており、初期評価で出血があっても進行度には関係が無いことが示唆される。
低リスクICH群(硬膜外/硬膜下血腫<9mm、脳挫傷<2cm、単葉のみの脳挫傷、血管造影で異常のない外傷性くも膜下出血、脳室出血<2cm)、中リスクICH群(低リスク以外で高リスクではない)、高リスクICH群(低リスクではなく、減圧開頭やICPモニタを使用したもの)でわけて検討したところ、低リスク群では25%にICH進行が認められ、48時間までに最大となっていたのに対し、中リスクでは42.9%、高リスクでは64.2%にICH進行が認められ、72時間までに最大とならないものがそれぞれ22.2%、16.3%いた。
✔ 抗凝固療法後のICH進行
ICH進行が起きた後に抗凝固療法を開始した研究を対象にして検討したところ、抗凝固療法を1~3日の間に開始した場合のICH進行は5.6%、4日以降に開始した場合のICH進行は1.5%に認められた。この開始時期の違いによる進行割合の差は有意であった。
ICH進行が起きる前に抗凝固療法を開始した研究を対象にして検討したところ、抗凝固療法を1~3日の間に開始した場合のICH進行は3.1%、4日以降に開始した場合のICH進行は2.8%に認められた。この開始時期の違いによる進行割合の差は有意ではなかった。
びまん性軸索損傷(DAI)を対象とした研究では、ICH進行はすべて72時間以内に認められており、4日目以降に抗凝固療法を開始した場合にICH進行が起きる率は1.6%であった。
未分画ヘパリン使用群でICH進行が認められたのは9.2%であったのに対し、低分子ヘパリン使用群でICH進行が認められたのは3.9%であり、有意な差であった。
✔ 深部静脈血栓症の割合
8日目以降に抗凝固療法を開始した群でDVT発生率が有意に高まった。未分画ヘパリン使用群では4.6%に認められたが、低分子ヘパリンでは2.8%であり、この差は有意ではないものの(p=0.09)未分画ヘパリンで有用な傾向があった。
✔ 結論
中~高リスクICHがある場合は受傷1~3日は抗凝固療法は行わず、4日目以降に開始する。低リスクICHがある場合は48時間以内にICH進行しなければ抗凝固療法を開始、48時間以内にICH進行しても4日目以降であれば抗凝固療法を開始できる。DAIでは72時間以内にICH進行しなければ抗凝固療法を開始する。TBI患者においては低分子ヘパリンの方が未分画ヘパリンより安全かもしれない。
◎ 私見
毎回議論になるので整理。4日目以降の低分子ヘパリンが良さそう。軽症であればCTをフォローしたうえでもう少し早めに始めてもいいみたい。ただし、一緒に診てくださっている脳神経外科の先生方の意見も重要。あくまで参考にとどめておく。
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