Scanlon MM, Gillespie SM, Schaff HV, Cha YM, Wittwer ED.
Crit Care Med. 2015 Aug;43(8):e316-8. PMID: 25978339
✔ 背景
再発性心室性不整脈の治療に交感神経ブロックが有用であることが知られている。治療抵抗性の心室性不整脈への超音波ガイド下両側星状神経節ブロックの有用性について報告する。
✔ 症例
79歳女性。NSTEMIと診断されIABP留置後にCABG(3枝バイパス)を施行した。術後、LOSに対してアドレナリンとバゾプレシンを要する状態であったが術後2日目には終了できた。しかし、術後3日目にVFとなり除細動を要した。その翌朝もVFとなり難治性であった。開胸心マッサージを行いつつECMOを導入した。術後8日目にはECMOを離脱できたが、アミオダロン、エスモロール、プロカインアミド、リドカイン、マグネシウムを最大用量で使用しているにもかかわらずVFやVTを繰り返すようになった。術後10日目、交感神経抑制のために両側星状神経節ブロックを行うことになった。
星状神経節ブロックはICUで超音波ガイド下に行われた。消毒後に超音波で星状神経節を描出し、0.25%ブピバカインを6mlずつ両側に注入した。手技は合併症なく終えることができた。ブロック後、数日間心室性不整脈は起きなかった。アドレナリンとミルリノンを減量でき、IABPも離脱できた。両側星状神経節ブロックは4日後に再度行った(1%リドカイン+0.5%ブピバカイン混合液)。その後は、8連のVTを認めたのみであった。抗不整脈は徐々に減量できた。初回ブロックより12日後に3回目のブロックを施行したが、このときには既に人工呼吸を終了していたため呼吸器合併症の懸念から片側のブロックにとどめた。全ての薬剤を減量でき、ICD埋め込み後に退院した。星状神経節ブロック後からはショックを要する不整脈は起きていない。
✔ 考察
超音波を用いることで血管系や筋を描出でき、局所麻酔薬の誤注入を予防できて有用である。長期の交感神経遮断効果を期待するためには胸腔内の交換神経節切除やアブレーションを考慮すべきであるが、隔週の星状神経節ブロックで十分であったとの報告はある。星状神経節ブロックは有用だが合併症(血管内誤注入~痙攣、くも膜下投与~呼吸停止・意識消失、横隔神経麻痺)に注意すべきである。
本症例では心室性不整脈を迅速に停止させる必要があったため両側をブロックしたが、片側でも有用であるとの報告はある。その際は左側が右側に比べて有効であるとされる。
◎ 私見
麻酔科医になりたての頃に盲目的に行っていた星状神経節ブロック(SGB)。すっかり記憶から消えようとしていたところにこんな話題。この症例に関しては薬剤の使用など、もっと何とかできたのではないかと思うところはある。どうにもならない、というときの奥の手としてSGBを頭の片隅に置いておこうと思う。
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