2015年10月26日月曜日

敗血症における血小板の役割

Understanding platelet dysfunction in sepsis.
Pigozzi L, Aron JP, Ball J, Cecconi M.
Intensive Care Med. 2015 Aug 13. PMID: 26266843


✔ 背景
 敗血症は感染に対する全身性炎症反応と定義され、死亡率が高い。血小板が敗血症において果たす役割は完全には解明されていない。通常、血小板は1×10*11が毎日産生されているが、生理的ストレスで20倍にまで産生量が増加しうる。
 炎症性サイトカインは血管内皮障害と相まって血小板を活性化する。さらに細菌は直接的/間接的に血小板を活性化する。活性化された血小板は白血球を誘導し、血小板・白血球・血管内皮細胞を凝集させ、白血球による貪食とNeutrophil extracellular traps (NETs)形成を促進する。敗血症ではフィブリン沈着と血小板活性化によって凝固亢進状態となる。これにより宿主の防御反応のひとつとして微小血栓が形成されるが、一方で臓器障害を引き起こし、さらにはDICに至ることもある。
✔ 血小板濃度
 重症患者で血小板が減少することはよくある。敗血症において、血小板減少は昇圧剤の使用や酸素化悪化と関連している。市中肺炎でも血小板が低いほど入院後に敗血症性ショックや死亡に至ることがおおくなるとされる。
 血小板の推移をみることも重要である。敗血症患者でICU入室後の遅発性血小板減少が生じた場合、死亡率が上昇することが示されている。
✔ Platelet volume indices (PVIs)
 Mean platelet volume (MPV)、Platelet distribution width (PDW)を計測することができる。局所感染にとどまっている場合と比較して敗血症ではMPVが大きくなることが示されている。つまり、MPVが増加している時はより侵襲的な感染症や抗菌薬治療の失敗を考えなくてはならない。ICU入室患者で生存者はMPVが減少していくのに対し、死亡者ではMPVが増加するとも報告されている。新生児では敗血症患者や死亡者でMPVやPDWが大きくなることが示されている。
✔ Immature platelet fraction(IPF)
 未成熟な血小板は大きく、RNAを大量に含む。IPFが大きいということは血小板産生の活動度が高いことを示す。IPFはDICやACSの予後予測に用いられる。敗血症では、血液培養陽性患者でIPFが大きくなっていたことが報告されている。また、敗血症発症2日前にIPFが増加するとも報告されており、感染症発症の予測に用いることができるかもしれない。
✔ 血小板凝集
 活性化した血小板の割合を知るには血小板凝集能を測ればよい。敗血症では血小板凝集能が低下すると報告されているが、これは血小板数が消費性に減少し、血管内細胞機能不全が存在し、凝固因子が減少している事が原因である。非感染性の重症患者や軽症敗血症に比べて、重症敗血症や敗血症性ショックでは血小板凝集能が減少している事が示されており、凝集能低下が死亡率増加と関連している事も示されている。
✔ トロンボポエチン(TPO)
 炎症の存在下ではIL6の作用によるTPOが増加する。敗血症の重症度が増加するとTPOも増加する。救急外来受診患者でSIRSを呈していたもののみを抽出して検討したところ、感染症性SIRSでTPOが有意に高いという結果であった。つまり、TPOは重症度を示しうる。
✔ 結論
 血小板は敗血症の病態生理で重要な役割を担っており、新しい治療戦略の指標として期待できる。
敗血症における血小板の役割(文献より引用)

◎ 私見
 炎症と凝固のクロストークはよく知られているが、そのひとつである血小板についてまとめてあるReview。IPFやMPVなどいくつかの新しい指標について紹介してあるが、これらの指標をルーチンで測定しているICUってあるのかな? 実際に臨床でモニタしてみてどうか、という手ごたえが知りたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿