William F. Peacock et al.
Crit Care 2015 19:399
✔ 急性心不全(AHF)のリスク層別化
AHF患者の重症度や背景は様々である。リスク層別化を行うことが治療の意思決定に有効である。予後不良の因子として、AHF入院歴、BNP増加(>1000pg/ml)、低ナトリウム血症(<136mmol/L)が知られている。その他、BUN>43、Cre>2.75、収縮期血圧<115mmHg、トロポニン増加などが挙げられる。BUN、Cre、収縮期血圧を組み合わせることで在院死亡率のリスクが高い事を予想できると言われている(OR 12.9)。一方、低リスク群については収縮期血圧>160mmHg、トロポニン正常が独立した予測因子であるという報告がある。
1.血圧
救急外来を受診したAHF患者の層別化に血圧は古くから用いられてきた。
大部分のAHF患者は高血圧(収縮期血圧>140mmHg)である。この群の患者は症状が激しく、末梢浮腫はほとんどみられないが急性肺水腫をきたしている事が多い。適切に治療すれば予後はよいことが知られている。治療は降圧に主眼を置き、利尿薬の使用は最小限にとどめる。高用量の硝酸薬と少量の利尿薬の組み合わせがよい。
高血圧のAHF患者管理(文献より引用) |
正常血圧のAHF患者管理(文献より引用) |
低血圧のAHF患者管理(文献より引用) |
2.バイオマーカ
ACCF/AHAのガイドラインによると、BNPはAHFの鑑別と管理に有用であるとされている。BNPのAHF診断における有用性はRED-HOT研究で検討された。医師の見立ては入院を要するかどうかや90日死亡率を予測するには不十分であったが、BNP上昇(>200pg/ml)は90日間の予後悪化を強く示唆するという結果であった。ADHERE研究のデータを解析したところ、BNP上昇は有意に院内死亡を予測した。同様の研究結果がほかにも数編報告されている。
BNPによるリスク層別化(文献より引用) |
バイオマーカを組みあわせて評価に用いるという方法もある。トロポニン陽性かつBNP>840pg/mlでは院内死亡率が上昇し、ICU入室率、在院日数延長とも関係していた。
3.その他の因子
腎機能不全はAHF患者の予後予測に有用である。慢性腎疾患や入院中の腎機能の悪化(Cre +0.3mg/dl)は短期死亡率上昇と関係している。また、通常治療の後に座位の症状は改善したものの仰臥位では呼吸苦が出現するようでは治療が不十分であることを示唆するという報告がある。
◎ 私見
血圧を用いた層別化は有名。これにバイオマーカを組み合わせて急性期管理の方針やDispositionを考えていく、ということになる。救命救急を看板に掲げている以上、”心不全だから利尿薬”では許容されないのである。なかなか聞いてもらえないのだけど…。
考えながら治療をするという面白さが急性心不全の初療にあると思うのは僕だけだろうか。
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