2016年2月20日土曜日

Driving pressureを指標とした呼吸管理は有用

Open Lung Approach for the Acute Respiratory Distress Syndrome: A Pilot, Randomized Controlled Trial.
Kacmarek RM, Villar J, Sulemanji D, Montiel R, Ferrando C, Blanco J, Koh Y, Soler JA, Martínez D, Hernández M, Tucci M, Borges JB, Lubillo S, Santos A, Araujo JB, Amato MB, Suárez-Sipmann F;Open Lung Approach Network.
Crit Care Med. 2016 Jan;44(1):32-42. PMID: 26672923

✔ 背景
 Open lung approach(肺開放戦略・OLA)は肺リクルートメントとPEEP調整からなる人工呼吸戦略である。ARDS networkのプロトコルと予後を比較した。
✔ 方法
 他施設無作為化パイロット研究。20施設が参加した。AECCの診断基準でARDSと判断された18歳以上の症例で、P/F 200未満で急性発症であり、両側の浸潤影をきたすも左心不全が臨床的に否定されたものを対象とした。18歳未満、35kgPBW未満、BMI>50、COPD急性増悪、化学療法や放射線治療中の症例、重篤な心疾患患者は除外した。
 まずARDS networkが推奨する方法で12~36時間換気し、ARDSnet群とOLA群とに無作為に振り分けた。
人工呼吸器の設定(文献より引用)
・ARDSnet群:Table 1に示す通り、一回換気量を制限し、PEEP tableを使用してFIO2に応じたPEEPを設定、高炭酸ガス血症を許容した
・OLA群:肺リクルートメントとPEEP調整を行った。まず、患者を深鎮静して無呼吸とした。必要に応じて筋弛緩薬を使用した。最高気道内圧50~60㎝H2O、PEEP 35~45㎝H2Oとして肺リクルートメントを行う。続いて、VCV 4-6ml/kg、PEEP 25㎝H2Oの設定とし、3分ごとにPEEPを2㎝H2Oずつ低下させる。このとき最高気道内圧ーPEEPの値で一回換気量を割り、Dynamic complianceを計算する。Dynamic complianceが最大となるPEEPの値を採用し、これに3㎝H2Oを上乗せした設定とする。PEEPは最低24時間その値のままとし、下げるときは2㎝H2O以上減らさないようにする。
✔ 結果
 1874名がスクリーニングされ、200名が無作為化された。60日死亡率、ICU死亡率は有意差がなかったがOLA群で低い傾向があった。Ventilator free daysには差がなかった。Driving pressureとP/F比はOLA群で改善していた。Barotraumaには差がなかった。
✔ 結論
 OLAは酸素化とDriving pressureを改善し、死亡率やBarotraumaに影響することはなかった。
死亡率(文献より引用)
◎ 私見
 Driving pressureを指標とした管理が患者予後を変えるか調べたパイロット研究。残念ながら学会には来られなかったKacmarek先生の研究。自発呼吸のない患者で、リクルートメント後にDynamic compliance(呼吸器系コンプライアンスとほとんど同じと考えてよい)が最もよくなるPEEPを探す方法が有用かもしれないと示したもの。学会中も話題になっていた。
 自分のやり方(用手的リクルートメント+PEEP増加→換気量改善が得られるかどうかを判断)と似ているコンセプトだったりするし、腑に落ちる感じがした。ただし、あくまでパイロット研究。本当に有用なのかは今後の研究待ちだろう。

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