Prat G, Guinard S, Bizien N, Nowak E, Tonnelier JM, Alavi Z, Renault A, Boles JM, L'Her E.
J Crit Care. 2016 Apr;32:36-41. PMID: 26806842
✔ 背景
腹臥位換気は重症ARDSにおける補助療法の一つである。酸素化の改善が期待できるが、様々な合併症の危険性もある。ARDS患者の70~80%は腹臥位によって酸素化が改善するといわれるが、酸素化が改善するかどうかを予測する方法は確立していない。非侵襲的に行える肺エコーで腹臥位換気の効果を予測できるかどうかを検討した。
✔ 方法
19人のARDS患者を対象とした。診断基準はベルリン定義、全例肺保護換気を行った。腹臥位は少なくとも12時間行った。肺エコーや酸素化の指標の評価はH0(腹臥位直前)、H2(腹臥位2時間後)、H12(仰臥位に戻す直前)、H14(仰臥位復位2時間後)に行った。
肺エコーは5~8MHzカーブアレイプローブ、肥満患者や画像が不鮮明な場合は1~5MHzセクタアレイプローブを用いた。それぞれの患者について12か所の部位を調査し、後ろ向きに検討した。肺の換気状況は4段階に分類した。N(スライディングサインあり、時にAライン、Bラインはあっても1~2本)、B1(3本以上のBライン)、B2(多発するBライン、癒合するBライン)、C(Tissue like sign)。B1、B2、Cは換気不良の徴候であるとみなした。注意すべきは、Nは正常を意味するのではなく、換気があることを意味するのであって、例えば過膨張を識別できないことである。H2またはH12の時点でP/Fが20以上増加したとき、腹臥位によって酸素化が改善した(H2早期改善群、H12後期改善群)と判断した。
肺エコーによる分類(文献より引用) |
✔ 結果
対象患者の大部分が肺病変に起因するARDSであった。早期改善は63%、後期改善は68%に認められた。前胸部の肺エコーが正常パターンであった場合、腹臥位による酸素化の早期改善を特異度100%、陽性的中率100%で予測できたが、感度は58%、陰性的中率は58%にとどまった。同様の傾向が後期改善群でも認められた。
✔ 結論
肺エコーで前胸部の換気が良好であれば腹臥位によって酸素化が改善する。
◎ 私見
肺エコーを治療効果の予測に使えないかと考えていたら、同じようなことがすでに研究されていた。パイロット研究で対象が19人とかなり小規模なものだが、特異度100%で酸素化の改善を予測できるというのは魅力的。
そういえば。10年ほど前、上司に「お前が考えつくような研究のネタは、他の人がすでに思いついて研究されている」といわれたのを思い出してしまいました。まあ、そうなんだろうけど、指導医としてそんな言い方はないよな、と反面教師にすることを誓ったのでした。
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