Semler MW, Wheeler AP, Thompson BT, Bernard GR, Wiedemann HP, Rice TW; National Institutes of Health National Heart, Lung, and Blood Institute Acute Respiratory Distress Syndrome Network.
Crit Care Med. 2016 Apr;44(4):782-9. PMID: 26741580
✔ 背景
ARDS患者の輸液量を制限することで人工呼吸管理期間を短くすることができるが死亡率には影響がないことが知られている。このような輸液管理の恩恵を受けられるかどうかは初期の中心静脈圧(CVP)によって異なるかもしれない。
✔ 方法
ARDSに対する輸液管理の方法を調査した他施設無作為化試験(FACTT)の二次解析。最初のCVPと輸液管理方法、60日死亡率の関係を調査した。
✔ 結果
934例の人工呼吸管理を要するARDS患者においてCVPが計測されており、そのうちショックではない(つまり研究プロトコル通りの輸液管理をうけた)609例を対象として検討した。CVP>8mmHgの群で比較したところ、制限輸液群と通常輸液群の死亡率は同等であった(18% vs 18%)が、CVP≦8mmHgの群では輸液制限群のほうが死亡率が有意に低かった(17% vs 36% P=0.005)。多変量解析で、輸液戦略とCVPの関係が死亡率に与える影響について証明できた。治療的介入の差について調べたところ高CVP群間ではフロセミド投与量に差があったが、死亡率とは関係がなかった。低CVP群では輸液投与量に差があり、輸液が多いほど死亡率が有意に高くなった。
✔ 結論
CVPが低い場合は制限輸液が予後を改善する可能性がある。
各群の死亡率(文献より引用) |
◎ 私見
高CVP+制限輸液プロトコル、高CVP+通常輸液プロトコル、低CVP+制限輸液プロトコルの三つの群では死亡率が同じ(17~18%)であり、低CVP+通常輸液プロトコル群では死亡率が倍になっている。低いCVPで輸液が悪いということであり、直観に反するのでCVPが輸液の指標になると信じている人にとっては結構衝撃的な結果ではないだろうか。高齢で栄養状態の悪い人ほどCVPが低くなりがちなので、そのような人では輸液過剰が悪くなるのではとか、低CVPに輸液すると静水圧が劇的に上昇して肺水腫を悪化させるのではとかいろいろ考察されている。少なくとも「積極的に利尿薬を使用してマイナスバランスを達成する」のが制限輸液の本質ではなく、「輸液そのものを減らさないとダメ」ということなのだろう。
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