Bellani G, Laffey JG, Pham T, Fan E, Brochard L, Esteban A, Gattinoni L, van Haren F, Larsson A, McAuley DF, Ranieri M, Rubenfeld G, Thompson BT, Wrigge H, Slutsky AS, Pesenti A; LUNG SAFE Investigators; ESICM Trials Group. Collaborators (843)
JAMA. 2016;315(8):788-800
✔ 背景
ARDSは血管透過性亢進、肺重量増加、含気減少を伴う急性炎症性肺障害である。ベルリン定義に基づいて診断されるが、その疫学、管理内容、予後については調査されていない。ARDS診療においてはいくつかの臨床的疑問がある。すなわち、頻度と重症度、地域差、用いられる治療法(低一回換気量、高PEEP、腹臥位、筋弛緩、VV-ECMOなど)、自然経過などである。
✔ 方法
冬季の任意4週間にICUに入室して陽圧換気をうけた16歳以上の患者を対象とした。毎日「低酸素性呼吸不全」(P/F≦300、新規浸潤影、PEEP/CPAP/EPAP≧5㎝H2O)の発症がないかチェックし、発症した日をDay 1として経過を追った。「ARDS」の診断はベルリン定義にしたがって自動的に行われる。すなわち低酸素性呼吸不全、侵襲より1週間以内、両側浸潤影、心不全の除外である。また、各施設の調査者もARDSを発症したかどうかを問われる。なお、調査者は本研究に参加する前にWebで診断トレーニングを受けた。データ不備、非侵襲的陽圧換気、低酸素性呼吸不全発症から48時間以上経過したものは除外した。
✔ 結果
50か国、459施設が参加。期間中29,144例がICUに入室し、13,566例が人工呼吸管理を受けたが、そのうち、データ不備のない12,906例を解析対象とした。「低酸素性呼吸不全」4,499例のうち3,022例がICU在室中に「ARDS」の診断基準を満たした。「ARDS」発症のタイミングは、Day 1:2,665例、Day 2;148例、Day 3~:209例であった。このうちDay 1・2で「ARDS」を発症し、かつ非侵襲的換気を使用していなかった2,377例を解析した。
「ARDS」は全ICU入室患者の10.4%、人工呼吸管理患者の23.4%でみられた(0.42例/Bed/Month)
。地域差を見てみると、北米:0.46、南米:0.31、アジア:0.27、アフリカ:0.32、オセアニア:0.57であった。「ARDS」の診断基準を満たしたことを調査者が最終的に(入室期間中に)認識できたのは60.2%に過ぎず、タイムリーに認識できたのは34.0%に過ぎなかった。高い看護師/医師-患者比、若年、P/F低値、肺炎、膵炎では「ARDS」を正しく診断できていた。「ARDS」と認識すると、一回換気量は変わらないが高PEEP、腹臥位、筋弛緩薬を多用する傾向があった。
「ARDS」の重症度はMild 30.0%、Moderate 46.6%、Severe 23.4%であり、重症度が高くなると補助療法を行う比率と死亡率が高くなっていた。「ARDS」例において、一回換気量が8ml/kgPBWを超えていたものが35.1%、PEEPが12 ㎝H2O未満であったものが82.6%いた。プラトー圧は40.1%で測定されており、重症度があがるにつれてプラトー圧が高くなっていた。肺保護換気設定(一回換気量≦8ml/kgPBW+プラトー圧≦30㎝H2O)は3分の2だけであった。一回換気量はピーク圧、プラトー圧、肺コンプライアンスと関係がなかった。ピーク圧やプラトー圧が高い例でPEEPも高い傾向があった。PEEPはP/F、FIO2、肺コンプライアンスと関係がなく設定されており、FIO2とSpO2に逆相関が認められたことから、低酸素血症に対してはPEEPではなくFIO2で対処していることが分かった。
補助療法ほとんど用いられないが、重症度が高くなると多く使用される傾向があった。「ARDS」のICU死亡率は35.3%、院内死亡率は40.0%であった。重症度があがるほど死亡率が高くなり、人工呼吸管理期間とICU在室日数が長くなるが、在院日数は不変であった。プラトー圧と換気駆動圧が高いほど院内死亡率が高くなった。
✔ 結論
ARDSはICU入室患者の1割に認められるが、見過ごされているうえに治療的介入も不十分であり、死亡率も高い。その管理には改善の余地がある。
補助療法ほとんど用いられないが、重症度が高くなると多く使用される傾向があった。「ARDS」のICU死亡率は35.3%、院内死亡率は40.0%であった。重症度があがるほど死亡率が高くなり、人工呼吸管理期間とICU在室日数が長くなるが、在院日数は不変であった。プラトー圧と換気駆動圧が高いほど院内死亡率が高くなった。
✔ 結論
ARDSはICU入室患者の1割に認められるが、見過ごされているうえに治療的介入も不十分であり、死亡率も高い。その管理には改善の余地がある。
◎ 私見
当施設も参加したLUNG-SAFE研究。同じ月にSepsis-3が発表されていて、なんとなく影が薄いけど、かなり重要な意味があるのではないかと思っている。意外とPEEPは低いし、一回換気量は制限できていないことがわかった。日頃から悩んでいること(一回換気量の制御など)が、他の施設でも同じような傾向になっていて面白い。一回換気量の制御~換気駆動圧の制御をどのようにモニターしてどのように行うのか、が今後の課題だろう。
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