Iba T, Thachil J.
Intensive Care Med. 2016 Jul;42(7):1193-4. PMID: 27143022
✔ Allingstrupらは重症患者に対するATⅢの効果に関するシステマチックレビューを報告した。彼らは敗血症だけでなく、敗血症性DICにも的を絞っている。バイアスの小さい4つのRCTを用いたメタアナリシスでATⅢは敗血症ならびに敗血症性DICの予後を改善しないと結論づけた。一方、Umemuraらは同様のメタアナリシスを3つのRCTで行い、ATⅢが死亡率を有意に減らすと結論づけている。なぜこのような違いが生じるのだろうか。両分析に含まれる最も大きな臨床研究はKyberSept試験である。Allingstrupらはこの研究の全症例を解析したが、UmemuraらはDICを合併しヘパリンを投与されていないものを抽出している。Kienastらの報告によるとKyberSeptに参加した2314例のうち、563例がヘパリンを使用しておらず、このうち40.7%(229例)がDICを合併していたと信頼するに足るデータがある。確かに無作為化されているとは言えないが、114例がATⅢを投与され、115例がプラセボを投与されており、ATⅢを投与された群のほうが死亡率が低かった(22.2% vs 40.0%、P<0.01)。
出血はDICをもともと合併していない症例においてATⅢ製剤を投与された群で有意に多かった(9.8% vs 3.1%)が、DICを合併している症例においては両群間に有意差はなかった。Tagamiらは日本における大規模データベースを利用した研究で、ATⅢの低用量投与が28日死亡率を有意に下げることを報告している。このような研究は実臨床におけるATⅢの効果を真に示すものではないかと考えられる。敗血症性DICにおけるATⅢ製剤の効果については結論はだせず、大規模なRCTが必要である。
◎ 私見
臨床研究やReviewだけでなく、EditorialやCorrespondeceも読むようにしている。今回は、ATⅢ製剤に関するAllingstrupらのメタアナリシスに対するコメント。
自分は「ATⅢは足りなければ補う」というスタンス。凝固と炎症は密接にかかわっている(というより、コインの表と裏の関係)なので、凝固に作用する薬剤は炎症にも何らかの作用を及ぼすと考えるのが自然だと思っているが、かといって無闇に投与するのも考えもの。
薬剤を投与する場合、①重症度/緊急度を加味した適応、②タイミング、③投与方法/投与量、④効果判定、⑤合併症/相互作用、⑥コストといった点を考えなければならない。DIC治療薬とされる薬剤では、①、②、③、⑤のあたりがまだ整理されていないと感じている。
自分は「ATⅢは足りなければ補う」というスタンス。凝固と炎症は密接にかかわっている(というより、コインの表と裏の関係)なので、凝固に作用する薬剤は炎症にも何らかの作用を及ぼすと考えるのが自然だと思っているが、かといって無闇に投与するのも考えもの。
薬剤を投与する場合、①重症度/緊急度を加味した適応、②タイミング、③投与方法/投与量、④効果判定、⑤合併症/相互作用、⑥コストといった点を考えなければならない。DIC治療薬とされる薬剤では、①、②、③、⑤のあたりがまだ整理されていないと感じている。
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