【RECITE study】
Fortier LP, McKeen D, Turner K, de Médicis É, Warriner B, Jones PM, Chaput A, Pouliot JF, Galarneau A.
Anesth Analg. 2015 Aug;121(2):366-72. PMID:25902322
Yu B, Ouyang B, Ge S, Luo Y, Li J, Ni D, Hu S, Xu H, Liu J, Min S, Li L, Ma Z, Xie K, Miao C, Wu X; RECITE–China Investigators.
Curr Med Res Opin. 2016;32(1):1-9. PMID:26452561
Saager L, Maiese EM, Bash LD, Meyer TA, Minkowitz H, Groudine S, Philip BK, Tanaka P, Gan TJ, Rodriguez-Blanco Y, Soto R, Heisel O.
J Clin Anesth. 2019 Aug;55:33-41. PMID:30594097
術後の筋弛緩薬の作用残存はTOF比<0.9と定義され、術後肺合併症(Postoperative pulmonary complications; PPC)のリスクである。筋弛緩作用残存の実状を調査した前向き観察研究(カナダ、中国、米国で施行されてそれぞれ別の論文として報告)。
カナダ:241人の患者のデータを解析。使用された筋弛緩薬の99%はロクロニウム。約7割の患者で拮抗薬としてネオスチグミンが使用された。筋弛緩作用残存は抜管時63.5%、PACU到着時56.5%に認められた。
中国:1571人の患者のデータを解析。拮抗薬として78%の患者にネオスチグミンを使用。抜管時の筋弛緩作用残存は57.8%に認められた。45歳未満、単回投与、ネオスチグミン投与から10分以上待ってから抜管、筋弛緩薬最終投与から1時間以上であることが筋弛緩作用が残存していないことと関連していた。
米国:255人の患者のデータを解析。筋弛緩作用残存は64.7%に認められた。男性、BMI高値、市中病院での手術が筋弛緩作用残存のリスク因子であった。
Alday E, Muñoz M, Planas A, Mata E, Alvarez C.
Can J Anaesth. 2019 Nov;66(11):1328-1337. PMID:31165457
筋弛緩拮抗薬の種類とPPCの頻度を検討する目的で行われた無作為化試験。全身麻酔と硬膜外麻酔で腹部手術を受ける126人の患者をネオスチグミンを投与する群とスガマデクスを投与する群に無作為に割り付けた。術後のForced vital capacity(FVC)は両群同程度に低下した。ネオスチグミン群の39%、スガマデクス群の29%に無気肺が認められたが有意差はなかった。
【POPULAR study】
Kirmeier E, Eriksson LI, Lewald H, Jonsson Fagerlund M, Hoeft A, Hollmann M, Meistelman C, Hunter JM, Ulm K, Blobner M; POPULAR Contributors.
Lancet Respir Med. 2019 Feb;7(2):129-140. PMID:30224322
術中の筋弛緩薬使用がPPCに関連しているかどうかを検証した多施設前向きコホート研究。22803人が対象となった。筋弛緩薬を使用するとPPCの頻度が増えた(OR 1.86)。筋弛緩モニタを使用しても、筋弛緩拮抗薬を使用してもPPCは減らなかった.
Blobner M, Hunter JM, Meistelman C, Hoeft A, Hollmann MW, Kirmeier E, Lewald H, Ulm K.
Br J Anaesth. 2020 Jan;124(1):63-72. PMID:31607388
前述のPOPULAR studyのPost-hoc解析。TOF比0.9以上ではなく0.95以上を確認してから抜管したほうがPPCは少なくなった
Gerlach RM, Shahul S, Wroblewski KE, Cotter EKH, Perkins BW, Harrison JH, Ota T, Jeevanandam V, Chaney MA.
J Cardiothorac Vasc Anesth. 2019 Jun;33(6):1673-1681. PMID:30655198
術中の非脱分極性筋弛緩薬を避けることでPPCを減らせるかどうかを検証した無作為化試験。心臓血管外科手術を受ける100人の患者を対象とし、気管挿管時のサクシニルコリン投与のみにとどめる群とシスアトラクリウムを通常どおりに使用する群に割り付けた。PPCの頻度は両群共に16%と有意差が無く、術者はサクシニルコリン群で手術のしづらさを感じていた。
◎私見
臨床的な判断のみでは筋弛緩作用残存を知ることはできず、その頻度は極めて多いということがまず重要なポイントだろう。次いで大事なのはTOF>0.9をもって筋弛緩作用残存を否定することはできず術後肺合併症を予防できないという点。拮抗薬も信頼に足るかというとそうではないわけで、術後肺合併症のハイリスク群は極力筋弛緩薬を使用しないというアプローチが必要なのかもしれないが、サクシニルコリンを使えばよいというアイデアはどうもうまくないらしく難しいところ。PPCは起こるものとして術後ICUでしっかり評価と治療を行うのが良いのだろう。