2015年8月3日月曜日

重症患者の筋障害は超音波で診断できる

Qualitative Ultrasound in Acute Critical Illness Muscle Wasting.
Puthucheary ZA, Phadke R, Rawal J, McPhail MJ, Sidhu PS, Rowlerson A, Moxham J, Harridge S, Hart N, Montgomery HE.
Crit Care Med. 2015 Aug;43(8):1603-11. PMID: 25882765


✔ 背景
 重症患者によくみられる身体機能の低下には早期から始まり速やかに進行する骨格筋量減少が関係している。超音波による肉眼的変化が顕微鏡的変化とどのように関係するかを調査した。
✔ 方法
 前向き二施設観察研究。Musculoskeletal Ultrasound in Critical Illness Longitudinal Evaluation (MUSCLE) studyから30人のサブグループを対象として行った。外側広筋(Vastus Lateralis; VL)から得られた組織標本と大腿直筋(Rectus Femoris; RF)の超音波所見を比較検討した。
✔ 結果
 筋組織の壊死性変化が認められた患者(n=15)では超音波所見の変化が著明に認められた(+8.2% vs -15.0%)。超音波所見による筋壊死予測のROC曲線下面積は0.74で、医原性の筋障害を除外すると0.85であった。筋膜炎は60%に認められた。
✔ 結論
 超音波を用いることで筋線維の壊死や筋膜の炎症を非侵襲的に検出することができる。筋膜炎が先行し、しばしば筋壊死を合併する。重症患者の機能的予後を予測できるかもしれない。
◎ 私見
 MUSCLE studyのサブグループで組織所見と超音波所見を比較。超音波所見は組織学的な異常をよく反映していた。骨格筋エコーは結構使えるのかも。簡単だし。どうやって自分の臨床に組み込むかが問題なので、もう少し勉強しないと。

2015年7月31日金曜日

重症患者の筋委縮(MUSCLE study)

Acute skeletal muscle wasting in critical illness.
Puthucheary ZA, Rawal J, McPhail M, Connolly B, Ratnayake G, Chan P, Hopkinson NS, Phadke R, Dew T, Sidhu PS, Velloso C, Seymour J, Agley CC, Selby A, Limb M, Edwards LM, Smith K, Rowlerson A, Rennie MJ, Moxham J, Harridge SD, Hart N, Montgomery HE.
JAMA. 2013 Oct 16;310(15):1591-600. PMID: 24108501


✔ 背景
 重症患者では機能障害を伴う骨格筋委縮が認められる。骨格筋委縮の特徴や蛋白代謝異常における病態学的役割を明らかにする事を目的として研究を行った。
✔ 方法
 平均APACHEⅡスコア 23.5、患者は18歳以上で48時間以上人工呼吸管理を受け、7日以上ICUに在室し生存退室した63人を対象として検討した。筋委縮は第1、3、7、10日目に大腿直筋の横断面積を超音波で計測して判定した。組織学的な検討や蛋白代謝についても検討した。
✔ 結果
 大腿直筋の横断面積は10日目に有意に減少していた(-17.7%)。筋生検を行った28人について、大腿直筋横断面積の減少、筋線維横断面積の減少、蛋白/DNA率の減少が観察された。大腿直筋横断面積減少は一臓器不全患者に比べて多臓器不全患者で大きかった。筋線維壊死は54.1%に認められた。筋蛋白合成は1日目に既に抑制されており、7日目には増加に転じていた。しかし、下肢の筋蛋白破壊は10日間にわたって続いており、破壊に比べて合成が抑制されている事が原因であることが示唆された。
✔ 結論
 重症患者において筋委縮は早期から速やかに生じており、その程度は多臓器不全患者で強かった。
大腿直筋横断面積の推移(文献より引用)
◎ 私見
 重症患者の筋委縮はかなりダイナミックに起きている様子。さて、この意義は何か。機能的予後を示すのか、もっと他の何かを反映するのか。筋委縮の程度を見ながら介入をするとよいのか。治療の指標になるのか。色々と興味はある。

2015年7月29日水曜日

難治性心室性不整脈に星状神経節ブロックが有用

Urgent Ultrasound-Guided Bilateral Stellate Ganglion Blocks in a Patient With Medically Refractory Ventricular Arrhythmias.
Scanlon MM, Gillespie SM, Schaff HV, Cha YM, Wittwer ED.
Crit Care Med. 2015 Aug;43(8):e316-8. PMID: 25978339


✔ 背景
 再発性心室性不整脈の治療に交感神経ブロックが有用であることが知られている。治療抵抗性の心室性不整脈への超音波ガイド下両側星状神経節ブロックの有用性について報告する。
✔ 症例
 79歳女性。NSTEMIと診断されIABP留置後にCABG(3枝バイパス)を施行した。術後、LOSに対してアドレナリンとバゾプレシンを要する状態であったが術後2日目には終了できた。しかし、術後3日目にVFとなり除細動を要した。その翌朝もVFとなり難治性であった。開胸心マッサージを行いつつECMOを導入した。術後8日目にはECMOを離脱できたが、アミオダロン、エスモロール、プロカインアミド、リドカイン、マグネシウムを最大用量で使用しているにもかかわらずVFやVTを繰り返すようになった。術後10日目、交感神経抑制のために両側星状神経節ブロックを行うことになった。
 星状神経節ブロックはICUで超音波ガイド下に行われた。消毒後に超音波で星状神経節を描出し、0.25%ブピバカインを6mlずつ両側に注入した。手技は合併症なく終えることができた。ブロック後、数日間心室性不整脈は起きなかった。アドレナリンとミルリノンを減量でき、IABPも離脱できた。両側星状神経節ブロックは4日後に再度行った(1%リドカイン+0.5%ブピバカイン混合液)。その後は、8連のVTを認めたのみであった。抗不整脈は徐々に減量できた。初回ブロックより12日後に3回目のブロックを施行したが、このときには既に人工呼吸を終了していたため呼吸器合併症の懸念から片側のブロックにとどめた。全ての薬剤を減量でき、ICD埋め込み後に退院した。星状神経節ブロック後からはショックを要する不整脈は起きていない。
✔ 考察
 超音波を用いることで血管系や筋を描出でき、局所麻酔薬の誤注入を予防できて有用である。長期の交感神経遮断効果を期待するためには胸腔内の交換神経節切除やアブレーションを考慮すべきであるが、隔週の星状神経節ブロックで十分であったとの報告はある。星状神経節ブロックは有用だが合併症(血管内誤注入~痙攣、くも膜下投与~呼吸停止・意識消失、横隔神経麻痺)に注意すべきである。
 本症例では心室性不整脈を迅速に停止させる必要があったため両側をブロックしたが、片側でも有用であるとの報告はある。その際は左側が右側に比べて有効であるとされる。

◎ 私見
 麻酔科医になりたての頃に盲目的に行っていた星状神経節ブロック(SGB)。すっかり記憶から消えようとしていたところにこんな話題。この症例に関しては薬剤の使用など、もっと何とかできたのではないかと思うところはある。どうにもならない、というときの奥の手としてSGBを頭の片隅に置いておこうと思う。

2015年7月26日日曜日

ガイドラインを盲信してはいけない

Ten things you should consider before you believe a clinical practice guideline.
Jaeschke R, Guyatt GH, Schünemann H.
Intensive Care Med. 2015 Jul;41(7):1340-2. PMID: 25516088


1.臨床診療ガイドライン(CPG; Clinical practice guidelines)は最近発表されたものでなくてはならない。4年も空けば問題があると考えた方が良い

2.実用的かつ行動可能な回答に繋がるような臨床的疑問点が挙げられるべきである。この目的で我々はPICO(Population, Intervention, Comparator, Outcome)モデルを推奨する。

3.”エビデンスのもたらされた年代”を考慮しなくてはならない

4.介入と比較対象は実臨床と関連していなくてはならない

5.アウトカムは患者にとって重要なものであるか判定すべきである

6.望まない効果を避けることはできないのだから、ガイドラインは望まれる結果と望まない結果とを併記すべきである

7.効果の程度を提示するべきである

8.全ての対象に推奨される事項と、ある特定の患者群でのみ推奨される事項とを明確に区別するべきである

9.利益相反について明示すべきである

10.全ての医師が全ての患者に対して同一の治療を提供することを望んでいるわけではないことを明示すべきである

◎ 私見
 ガイドラインを丸暗記しても臨床はできない。信じる前にチェックするべきところがあるでしょうということ。一方で、「ガイドラインなんか意味が無い」とガイドラインを読むことを放り出してもだめ。

2015年7月24日金曜日

PET-CTの使い道

PET-CT for detecting the undetected in the ICU
Sakir Akin et al
Intensive Care Med 2015

 62歳の男性が化学療法中に発症した敗血症で気管挿管され、血液培養が陽性になったが感染巣が特定できなかった。PET-CTを施行したところ右心耳にFDGの集積があり、ここが感染巣であることが判明した、という内容のもの。徹底的に感染巣を探しても見つからないような場合にはPETCTも有用かもしれないと結論付けている。
 PET-CT。まあ使うことはないと思うけど、一応記憶しておくことにする。

2015年7月22日水曜日

延命治療の差し控えと死亡率

Respective impact of no escalation of treatment, withholding and withdrawal of life-sustainingtreatment on ICU patients' prognosis: a multicenter study of the Outcomerea Research Group.
Lautrette A, Garrouste-Orgeas M, Bertrand PM, Goldgran-Toledano D, Jamali S, Laurent V, Argaud L, Schwebel C, Mourvillier B, Darmon M, Ruckly S, Dumenil AS, Lemiale V, Souweine B, Timsit JF; Outcomerea Study Group.
Intensive Care Med. 2015 Jul 7. PMID: 26149302


✔ 背景
 延命治療差し控えの決断(Decisions to forgo life-sustaining treatment (DFLST))の頻度と予後に及ぼす影響を調査した
✔ 方法
 データベースを用いた前向き観察研究。DFLSTは以下のように定義された。
Stage 1:治療に最善と考えられるが必要というわけではない治療を行わない(No escalation)
Stage 2:治療に必要な治療を行わない(Withholding)
Stage 3:治療に最善と考えられる必要な治療を止める(Withdrawal)
 30日死亡率との関係を重症度でマッチさせて検討した
✔ 結果
 10,080人が対象となった。1290人(13%)においてDFLSTがなされた。No escalationは26%、Withholdingは39%、Withdrawalは35%であった。ひとつ以上の慢性疾患を持つ高齢者や重症度の高い患者がDFLSTを行われる群に多くみられた。DFLSTがされなかった患者の30日死亡率は13%であったのに対し、No escalationでは35%、Withholdingでは75%、Withdrawalでは93%であった。重症度をマッチしたところ、30日死亡率のハザード比はWithholdingで5.93、Wtihdrawalで20.05と有意であったが、No escalationでは1.14と有意ではなかった。
✔ 結論
 DFLSTは13%の患者で行われていた。ただし、No escalationは死亡率を上昇させる要因では無かった。

◎ 私見
 とても興味深い論文。治療の差し控えにはNo escalation、Withholding、Withdrawalの三段階があってNo escalationだけは死亡に寄与しない。その理由として必要な可能性の低い治療を”しない”としただけかもしれないとか、医原性の合併症が減ったからではないかとか考察している。この最後の「医原性合併症の減少」というのが面白い。積極的になんでもすることが患者さんにとって良いことではないことを間接的に示しているのではないだろうか。延命治療の考え方を整理するうえでもよい論文でした。

2015年7月20日月曜日

重症患者のビタミンD欠乏

Understanding vitamin D deficiency in intensive care patients
K. Amrein et al
Intensive Care Med. 2015

✔ 背景
 ビタミンD欠乏は筋骨格系疾患の原因となることが知られている。近年、重症ICU患者の予後に関わる修飾因子であるといわれるようになった。
✔ 頻度
 血液中の25-hydroxyvitanin D(25OHD)はビタミンDの状態を知るマーカである。議論はあるが、75nmol/L以下をビタミンD低下、50nmol/L以下をビタミンD欠乏、30nmol/L以下を重度の欠乏と定義されている。50mmol/Lを閾値としたとき、ICU患者におけるビタミンD欠乏の頻度は60~100%である。
 ICU入室後に様々な原因でビタミンDは欠乏する。まず、食事(卵、アボカド、魚など)からほとんど摂取できなくなる。さらにいくつかの遺伝的・行動学的因子がビタミンDの光合成を抑制していることもある。これらの要因の影響は入院することによって増幅される。手術、輸液、ECMO、CPB、血漿交換は著明にビタミンDを低下させる。さらに、ICU患者は肝機能障害、副甲状腺機能障害、腎機能障害を合併して25OHDから活性体への変換がうまくいかなくなるリスクがある。
✔ ビタミンDの補充
 ICUの患者は必要最低限の量のビタミンDを摂取していないか低い量(200~800IU/day)しか補充されない。しかし、その量では補充に数カ月必要となってしまう。つまり、入院患者のビタミンDを正常なレベルまで戻すのはほとんど不可能である。
✔ ビタミンD欠乏は重要なのか?
 ビタミンDは消化管・腎・骨に作用してカルシウムの調節に重要な役割を持つ。さらに、重症疾患の病態生理に関わる重要臓器にその受容体が見つかっている。基礎実験や観察研究のデータによると、ビタミンD欠乏は重症疾患の重症化や予後悪化に関与するとされている。
✔ 介入試験
 現時点では検討に耐えうるRCTはひとつしかない(VITdAL-ICU)。この研究では475名の重症患者を無作為にカルシウム補充群(Cholecalciferol 540,000IU負荷投与+90,000IU/month)とプラセボ群に振り分けて検討したが、プライマリエンドポイントである在院日数には有意な差が無かったが、有意ではないもののビタミンD群では院内死亡率を7%低下させていた。ビタミンD<30nmol/Lの重度の欠乏群で検討すると死亡率低減効果は有意となった。
✔ 展望
 これまでの研究を総合すると、高用量ビタミンD補充は魅力的な介入と考えられるが、ビタミンD欠乏が直接的に予後悪化に関係しているのかはまだ明らかになっておらず、高ビタミンD血症(>200nmol/L)がもたらす副作用(高カルシウム血症・高カルシウム尿症)があり得ることを考えると、さらなる研究を要すると言わざるを得ない。
 これらの研究を行うにあたってはいくつかの問題があることを認識すべきである。まず、25OHDの閾値が定まっていないことが挙げられる。VITdAL-ICUの結果を考えれば30nmol/Lを採用すべきかもしれないが、ベースラインの25OHDが30~50の患者の身体機能も長期間かけて改善してきている事を無視してはいけない。ふたつめに、ビタミンD値の結果が数週間遅れて報告されることも考えに入れなくてはいけない。みっつめに、ビタミンD代謝物や用量設定の問題が挙げられる。最後に、適切なエンドポイントの設定が挙げられる。25OHDが著明に低下している患者では死亡率が良いのかもしれないが、そうでない患者では別のエンドポイントを設定すべきかもしれない。
✔ 結論
 重症患者でビタミンDは欠乏しており、介入することは有用である可能性があるが、さらなる研究が必要である。

◎ 私見
 まったく注目していなかったけど、さすがに無視できないので少し勉強。まだまだ発展途上の領域のようなので、今後の動向に注目。