100 thoughts for the critical care practitioner in the new millennium.
Franklin C.
Crit Care Med. 2000 Aug;28(8):3050-2. PMID: 10966294
訳に自信がありません…
できるだけシンプルにまとめてみました。
✔ 診断に関するTips
1.治療につながる診断だけが重要。
2.急に意識状態が悪化したら薬歴を調べよ。
3.症状の有無で敗血症や肺塞栓を除外することはできない。
4.足を触ってショックの有無を探れ。爪先があたたかければ心原性ショックはない。
5.薬物中毒患者の病歴は信用できない。
6.血液ガスが異常なのに患者が元気そうなら、解釈が間違っているか測定ミスである。
7.「肺塞栓を除外した」とされる患者の多くは肺塞栓症ではない。
8.四肢軟部組織感染症では必ずX線写真、外科コンサルト、壊死創辺縁部の培養を行う。
9.ICUにおける神経診察は標準的な方法とは異なる。診察のために神経内科医を呼ばない。
10.もともとNa正常の患者が低/高Na血症となったら、それは医原性である。
11.稀な中毒患者に出会ったら血清検体をふたつとっておく。
12.慢性の経過をとる重度の低酸素血症をみたら職歴を聴取する。
13.いくつかの診断は自分以外の人によってなされる。
✔ 治療に関するTips
14.気道の問題には常に敬意を払って対処せよ。
15.リスクのない治療はない。
16.洞性頻脈では心拍数ではなく原因を治療する。
17.四肢の浮腫では死なない。ゆっくり形成されゆっくり消える。早く消失させようとしないこと。
18.産婦人科・麻酔科・新生児科が集まって重症妊婦の児を出すか決めるべき(だが、難しい)。
19.代謝性アシドーシスを呈するショックの患者は陽圧換気を要することが多い。
20.人工呼吸管理では筋弛緩薬を要さないことがほとんどである。
21.敗血症かどうか迷ったら患者を見よ。具合が悪そうなら直ちに抗菌薬を投与する。
22.抗菌薬治療のゴールはカバーを狭くすることである。
23.蘇生時はROSCの有無に関わらず協力してくれたメンバーに謝意を示すべきである。
24.振戦せん妄と診断された患者が振戦せん妄とは限らない。
25.新しい薬剤を広く浅く覚えるより、数種類の薬剤を深く理解する方が良い。
26.毎日回診時に使用薬剤をチェックし、不要なものは直ちにやめる。
27.モルヒネは鎮痛・鎮静・肺水腫の治療・呼吸仕事量軽減に用いる。深く知るべし。
✔ カテーテルとチューブに関するTips
28.人工呼吸患者が突然不穏になったら、チューブ閉塞・呼吸音・酸素飽和度をチェックせよ。
29.挿管の適応は、気道閉塞の解除・陽圧換気の提供・気道保護・気管清浄化である。
30.点滴ラインが詰まったら「このラインは本当に必要か?」と考える。
31.肺動脈カテーテルはデータを提供してくれるが判断はしてくれない。
32.肺動脈カテーテルが無いと治療できないと言っている医者はカテがあっても治療できない。
33.肺動脈カテーテルのある患者が呼吸器に問題を起こしたら混合静脈血酸素飽和度を見る。
✔ 診療に関するTips
34.重症疾患は24時間進行するが、常に患者のそばにいることはできない。よって有能な集中治療医とは問題を予測し、理路整然とした治療計画を他の医師に引き継げなくてはならない。
35.病院を去る前に重要な臨床的決断をした場合、1~2時間後に電話でチェックする。
36.難しい決断に迫られた場合、何もしないというのも良いアイデアである。時間が解決する。
37.少なくとも月に1回は新しい技術や治療アプローチを試せ。3回連続して失敗したら、他の誰かがそれに挑戦できるようにしておく。
38.集中治療における診療は人生のようだ。誰にとっても困難だが、愚かならなお困難となる。
39.最良の集中治療医とは細部に注意を払える医師のことだ。
40.誰しも最初はICUを恐ろしい場所と感じるが、診療技能はそれを克服した事実にある。
41.訴訟を避けたければ、懸命かつ誠実に働き、患者とその家族と良好な関係を確立せよ。
✔ 判断・成功・失敗に関するTips
42.良い判断は経験に基づく。経験は悪い判断に基づく。
43.成功してもそこにこだわると自信過剰になる。すぐに次の行動に移れ。
44.失敗から学ぶべきだがそこにこだわると優柔不断になる。すぐに次の行動に移れ。
45.良くなると思った患者の何人かは悪くなる。
46.悪くなると思った患者の何人かは良くなる。
47.回診で決断を下す時には個人的な問題をわきに置いておく。
✔ 非集中治療医とのかかわりに関するTips
48.ある専門科の医師のみが集中治療を行えると信じている医師がいる。専門性をもった良い集中治療医もいれば悪い集中治療医もいる。歌い手ではなく、歌が重要である。
49.ICUで他科の医師と話すとき、意味するところを喋り、話した内容の意味を語れ。
50.時に、正しい事をするとICUは大騒ぎになる。
51.救急外来の医師とメモのやり取りをして知識を共有せよ。
52.集中治療室で働いたことのない老医師は賢明である。彼らから学べ。
53.集中治療室で働いたことのない老医師は賢明ではない。彼らから学べ。
54.コンサルトにはみっつの理由がある。助けや助言を要するとき、何かを学びたいとき、いまみている現象を専門科にも見てもらいたいときである。
55.よいコンサルタントは重症患者を1日に数回見に来る。
56.あなたから学ぼうとしているコンサルタントを敬え。
57.内科医が外科医にコンサルトする時に犯すふたつの大きな間違いは、彼らの言うことを全て信じてしまうか、全て信じないかである。意見はひとつの視点に過ぎない。外科医は常に正しいわけでも常に間違っているわけでもないから。
58.外科医が内科医にコンサルトする時に犯す大きな間違いは、彼らを無視してしまうことである。よって聞き逃してしまうか、時に分析の過程で麻痺してしまった内科医を信じてしまって学ぶことができない。
59.手術しないことを判断できる外科医は手術することを判断できる医師と同じくらい貴重である。
✔ 看護師や他の職種とのかかわりに関するTips
60.看護師の言うことに耳を傾けなさい。あなたと同じく正しいことを言うことも間違ったことを言うこともある。
61.看護師の名前を覚えて、彼ら/彼女らが望むならその名前で呼びなさい。
62.看護師も予定表を持っている。最終的な目標は看護師の予定表と自分の予定表をあわせて患者の予定表とすることである。
63.看護師と研修医は夜中に良いニュースで電話してくることはない。
64.ICUでもっとも過小評価されているのは病棟秘書である。
65.呼吸療法士は僅差で二位である。
✔ 患者とその家族に関するTips
66.集中治療で最も難しいのは家族に、家族の予期しない死を伝えることである。
67.人工呼吸中の患者が覚醒している時は、回診時に声をかける努力をしなさい。
68.人工呼吸中の患者が覚醒していない時は、回診時に声が聞こえているとみなしなさい。
69.重症患者が退院して1年後にICUにやってきたらスタッフとともに写真を撮りなさい。士気を高めることだろう。
70.回診時に死に瀕している患者に行きあった場合、亡くなった近親者のことを思い出しなさい。近親者が亡くなっていない場合は他の人に聞きなさい。
71.ICUに電話がかかってきたら2分以内に出なさい。
72.可能ならばベッドサイドに行く時間を人によって固定しなさい。その方が家族にとって便利である。
73.可能ならば家族に患者ケアに参加してもらいなさい。好きな食べ物を持ってきてもらいなさい。お風呂に入れるのを手伝ってもらいなさい。
74.ICUから退室した患者にはその日に一度訪室しなさい。
75.集中治療医としての役割は患者の擁護者となることである。時に唯一の擁護者であることもある。
✔ 示唆的なTips
76.疑わしい場合は手を洗え。
77.自分の患者が手術室でなぜその薬剤を投与されたのか麻酔記録を学びなさい。
78.一般病棟や救急外来にはひとりかふたりはICUに入るべき患者がいるものである。彼らを見つけ出し、ICUにたどり着けるように努力せよ。
79.病院で最も重症な患者はICUにいる。つぎに重症な患者はICUから移送されていく患者である。彼らから目を離すな。
80.看護師や研修医が担当患者について「昨日と変わりがありません」と言ったら、すべての患者は昨日より良くなるか悪くなるかどちらかしかない事を思い出せ。
81.ほとんどの場合、症例プレゼンテーションは5分以下にできる。検査データはできるだけ少なくするようにする。
82.椅子に座り、自分でご飯を食べ、鼻カヌラで酸素化が維持できていればICUから退室する。
83.中毒患者の大部分は助かるが、助からない場合は遅発性毒性作用、誤嚥性肺炎、病院における自殺企図のせいである。
84.燃え尽きを避けるために、重症患者管理以外の診療にも携わるべきである。
✔ ICUの公案
85.重症患者では心臓と肺はひとつのものとして考えるべきである。片方への侵襲はもう片方の臓器への負荷となる。片方に慢性的な障害がある場合、もう片方への侵襲は致命的となることがある。
86.ある臓器に侵襲が加わった時、その経過のはやさで代償が効くかどうかが変わる。一般に慢性的な臓器障害に対しては他臓器はある程度適応できる。
87.ワンポイントの所見よりも経過が重要である。
88.腎機能改善は重症患者が回復していることを示す確かな徴候のひとつである。
89.インフォームドコンセントなどということは通常ありえない。
90.賢明な経済学者がかつて述べたように「データは事実と同義ではない」
91.「事実は情報と同義ではない」
92.「情報は真実と同義ではない」
93.「真実は知識と同義ではない」
94.「知識は英知と同義ではない」
95.ICUで経験を積むことで多くの疑問に応える術を学ぶだろう。これは良いニュースである。悪いニュースは、答えのない疑問がたくさんあり、その数はとどまることなく増えていくことも学ぶであろうことである。無限に続くジグソーパズルで、その瞬間に最適のピースを一時的にはめるようなものだと考えよ。
✔ 集中治療医のための結びの引用
96.老子の「千里の道も一歩から」は複雑な重症患者の管理に当てはまる言葉である。
97.
シェークスピアの言葉を心に留めよ。「多くの驚異を聞いたが、中でも最も分からぬのは人びとが怖れることだ。最後は誰も避けられぬ、死ぬときは死ぬのだ」(ジュリアス・シーザーより)
98.ハムレットのホレーショへの助言に注意を払え。「天と地の間には君の哲学で夢想されるよりはるかに多くのものがあるのだ」
99.クロムウェルのスコットランド教会に対する勧告を心に留めよ。「あなたが間違っている事があり得ることを考えてほしい」
100.2500年前にヒポクラテスは記した。「人生は短く、学術の道は長い、機会は逃げやすく、経験は当てにならず、判断は難しい」 今日の集中治療を驚くほど適切に描写した言葉である。