2015年2月16日月曜日

末梢循環を指標とした敗血症性ショックの輸液管理

Early Peripheral Perfusion-guided Fluid Therapy in Patients with Septic Shock.
van Genderen ME, Engels N, van der Valk RJ, Lima A, Klijn E, Bakker J, van Bommel J.
Am J Respir Crit Care Med. 2015 Feb 15;191(4):477-80. PMID: 25679107 

ブルージャーナルに掲載されていたCorrespondence。

✔ 背景
 敗血症性ショックに対する輸液療法は重要だが、過小輸液は組織への酸素供給不足の遷延を意味し、過剰輸液は肺水腫や人工呼吸管理期間延長、死亡率の上昇に関連すると言われている。末梢循環不全は敗血症性ショックの予後予測因子として通常の血行動態パラメータより有用であると言われているが、これを指標とした輸液戦略は無く、そもそも適切な末梢循環を示す閾値も明らかでない。
✔ 方法
 前向き無作為化比較対象試験をパイロットスタディとして計画した。敗血症性ショックで入室した患者(MAP<65mmHg or Lac>3mmol/L)を無作為に通常治療群と末梢循環標的群(Peripheral perfusion-targeted fluid management; PPTFM)に割り付け、6時間にわたって輸液管理を行った。PPTEM群では、末梢循環指標(毛細血管再充満時間; CRT、Peripheral perfusion index; PPI、前腕-指尖部体温格差、組織酸素飽和度)を用い、このうち三つ以上が異常な場合を輸液療法の適応と判断した。通常治療群ではEGDTに基づいて管理した。その後、72時間後まで観察した。
✔ 結果
 両群間のベースラインには差が無かった。また、治療経過中の乳酸値や中心静脈血酸素飽和度にも差が無かった。PPTFM群は有意ではないものの6時間の輸液量が1.8L少なくなった。また、72時間の総輸液量も有意ではないものの2.5L少なくなった。PPTFM群では在院日数が少なく、臓器不全数が少なくなった。
✔ 結論
 末梢循環を標的とした早期輸液戦略についてさらなる研究が待たれる。




◎ 私見
 ショックの際に最初に犠牲になる末梢組織循環を指標にして輸液をしてはどうかという研究。ショックから離脱すれば末梢組織循環が回復するので、そこまでで輸液を終えれば過剰輸液の害を被らなくて済む。ショックに対して輸液と昇圧剤投与を行うのは、組織における酸素需給バランスを是正することが目的であり、血圧を上げることでもCVPを上げることでもない。そこで、乳酸値や中心静脈血酸素飽和度を指標にするというアイデアがでてきたが、本研究ではこれらの数値には両群間で差が無かったとのこと。さて、末梢循環指向型の輸液戦略が今後どうなるのか楽しみです。

0 件のコメント:

コメントを投稿