2015年2月19日木曜日

換気駆動圧が高いと死亡率が上昇する

Driving pressure and survival in the acute respiratory distress syndrome.
N Eng J Med 2015;372:747-55

✔ 背景
 プラトー圧を制限し、低い一回換気量(Vt)、高いPEEPで行う人工呼吸管理によりARDS患者の生存率を改善させることができる。しかし、これらのどの因子がどの程度重要なのかは分かっていない。呼吸器系のコンプライアンス(Crs)は機能的肺気量と関係している。自発呼吸のない患者における駆動圧(⊿P=Vt/Crs、ここでVtは機能的肺気量であり予想肺気量ではない)はVtやPEEPそのものより生存率と強く関係していると仮定して調査した。
✔ 方法
 ARDSを対象として行われた過去の無作為化試験の3562人の患者データを使用し、マルチレベル媒介分析を用いて解析した。媒介分析によって肺病変の重症度による交絡を最小限に抑えつつ、さまざまな人工呼吸器の設定によって生じる⊿Pの変化の影響を調査した。
✔ 結果
 いくつかの人工呼吸器のパラメータのうち、⊿Pが最も強く患者生存と関係していた。⊿Pの7cmH2Oの変化は死亡率の相対リスク上昇と有意に関係していており(RR 1.41; 1.31-1.51)、この傾向は肺保護換気を達成できていた患者でも同様に認められた(RR 1.36; 1.17-1.58)。VtやPEEPの変化はそれ単独では生存率には影響せず、⊿Pの減少に寄与する場合においてのみ有意に生存率に影響した。
✔ 結論
 ⊿Pは死亡リスクを最も強く予測する因子であった。⊿Pを下げるような設定は生存と関係している。


左:PEEP一定で⊿Pが高くなると死亡率もそれにつれて高くなる
中:⊿Pが一定で気道内圧が高くなると死亡率は不変
右:気道内圧一定でPEEEPが高くなる(⊿Pは低くなる)と死亡率は低下
(文献より引用)


⊿Pが高いほど死亡のリスクが高い
(文献より引用)

◎ 私見
 大御所Amatoらの研究。PEEPを高くすればよいというわけではないし、Vtを数字だけ小さくしても意味が無い(かもしれない)。昨年講演で同じ内容の話を聞いてから、いつ論文になるんだろうと待っていた。駆動圧は最近のトピックスでカンファレンスでも話題に。⊿Pをいかに低減するか、その戦略を考えて前向き試験で検討するという流れになるか。

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