2015年3月8日日曜日

人工呼吸中の早期リハビリテーションと予後

Early mobilization and recovery in mechanically ventilated patients in the ICU: a bi-national, multi-centre, prospective cohort study.
TEAM Study Investigators.
Crit Care. 2015 Feb 26;19(1):81. PMID: 25715872


✔ 背景
 ICU acquired weakness (ICUAW)は25~57%の患者に見られ、人工呼吸期間やICU在室日数、在院日数の延長と関係があり、機能的な回復を妨げ、長期生存率にも影響すると言われている。人工呼吸中から早期リハビリテーションを行うことでICUAWを軽減し、長期予後を改善する可能性がある。
✔ 方法 
 オーストラリア・ニュージーランドの12のICUで6ヶ月間にわたって観察研究がおこなわれた。もともと自立歩行が可能な患者で、ICU入室72時間未満かつ24時間以上人工呼吸管理をうけており、さらに48時間以上の人工呼吸継続が必要と思われる患者を対象とした。ICUを退室するか死亡するか14日が経過するまで毎日データ収集を行った。早期リハビリテーションは人工呼吸中に行われる全ての自動運動訓練を対象としてICU mobility scaleを用いて計測した。合併症はMAP<60mmHg、3分以上続くSpO2<88%、吸入酸素濃度>0.6が新規に起きた場合と定義した。ICUAWはMedical Research Council Manual Muscle Sum Scale (MRC-SS)を使用して評価した。
✔ 結果
 192人が検討対象となった。平均APACHEⅡスコアは19.1であった。昇圧剤は66%の症例で使用されており、深めの鎮静管理がされていた(64%)。挿管されて深い鎮静となっていることが早期リハビリテーションを行えなかった理由で最多であった。ICU死亡率は18.8%、ICU在室日数は11日、90日死亡率は26.6%であった。
 122人(63.5%)は早期リハビリテーションを受けることができなかった。患者-理学療法士の1,288回のコンタクトのうち、1,079回は早期リハビリテーションに結びつかなかった。理学療法士の接見は早期(中央値2日目)であった。
 早期リハビリテーションを受けた70人(36.5%)のICU入室から早期リハビリテーション開始までの日数の中央値は5日(3~8日)であった。リハビリテーションの内容で最も多かったのは床上運動訓練(94%)であり、以下、受動的座位変換(52%)、端座位(22%)、立位(11%)、車いす移乗(4%)、歩行(12%)であった。大きな合併症は無かったが、呼吸循環の異常のため0.4%のリハビリテーションが中断された。
 ICU退室時のMRC-SSスコアの平均は43.3であり、52%の患者でICUAWと判断された。ICUAWの有無年齢、APACHEⅡスコアは有意な関係が無かったが、早期リハビリテーションを受けた患者退室時のMRC-SSスコアが高い傾向にあった。ICUを生きて退室しても90日までに死亡してしまった患者はMRC-SSスコアが低い傾向にあった。
✔ 結論
 早期リハビリテーションはあまり行われていなかった。その理由として最も大きいのは気管挿管されている事と過鎮静であった。ICU退室時の筋力低下が無い方が長期予後がよい傾向があった。

ICUAWと生存率(文献より引用)

◎ 私見
 わたしの勤める施設でも人工呼吸中の早期リハビリテーションはそれほど行えていない印象がある。長期予後を変える可能性があるということで、この研究者たちはダブルアームの試験を行っている様子。結果が楽しみです。

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